潮汐潮流の変化
諫早湾の閉め切りで有明海の潮の流れが弱まった。

 細長い有明海では潮の満ち干(潮汐)の周期が長く、外海の潮汐周期と近いために大きく共振します。そのために干満の差が5mもある大きな潮汐が発生するのです。しかし、潮受け堤防の建設によって潮汐の周期が変わり、有明海の潮汐は減少してしまいました。潮汐は潮の流れにも大きな影響を与えるため、諌早湾閉め切り以降、有明海は潮流も遅くなってしまったのです。潮流の弱まりは、海水が上層と下層に分かれる「成層化」や泥の沈殿など、魚介類減少や養殖ノリ不作の要因となる現象を引き起こします。


  コップの中の水の揺れ方は、コップの大きさや形によって変わります。また、コップを押す手の動きと水の揺れ方の周期が合うこと(共振)で、水の揺れは大きくなります。内湾と外海の潮汐の関係もそれと同様です。潮受け堤防で地形が変わり、有明海の潮汐の振動周期が短くなったために、外海との共振が弱まって、有明海の潮汐は諌早湾の閉め切り前に比べて小さくなってしまったのです。(左上図)

諌早湾という有明海の中の「くぼみ」が減り、そこに流れ込む海水が減ったことも、有明海の潮流が弱まった原因と考えられています。諌早湾は海水循環のポンプのような役割を果たしていたのです。

諌早湾の閉め切り前は、有明海の海水は大きな潮汐や速い潮流によって上下方向にもよく混ざり合っていました。
【海水の成層化】
しかし、閉め切りによる潮汐潮流の弱まりで海水が成層化し、河川水が攪拌されずに上層を流れるようになりました。

前のページ▲ 1 2 3 4 5 6 7 8 ▼次のページ