諫早湾自然の権利訴訟 1999年10月23日現地検証指示説明書

(1)いこいの村長崎
原告側
指示説明
1 本地点南東部に諫早湾の全景が確認できる。潮受堤防の延長は7.05キロメートルである。潮受堤防の内側の調整池はドブ池特有の死んだ水の色をし、海側の水の色と全く異なることを一望できる。農水省の息がかかった協議会が設置した説明板が正反対の色分けをしていることに注目されたい。かつて諫早湾内側には広大な干潟が存在し、ムツゴロウを始めとした多くの野生生物が生息していた。また、渡り鳥の重要な中継地となっており多くの野鳥が観察された。

2 諫早湾を分断するようにして建設が進められた潮受堤防の規模の大きさが分かる。
 潮受堤防は諫早大水害級の洪水、伊勢湾台風級の高潮が同時にこの地域を襲った場合にも対応できるよう建設されると言う。しかしながら、諫早大水害時、多数の死傷者が出ているが、死傷者の発生した地域は市街地及び山間部が中心で諫早湾周辺部では死傷者がほとんど出ていない。
 本件施設による洪水防止機能はない。諫早湾周辺部の農地に対する海水の浸水防止機能が限定的にあるのみなので本件施設により諫早大水害並の水害に対する救命率が上がる訳ではない。

3 潮受堤防の北東部側が有明海など外海と連なる部分であり、南西部側が調整池である。調整池の南西部では現在内堤防工事が進められている。調整池の水は本件事業により開発される耕作地の水源となることが予定されている。
 調整池には本明川、有明川などから水が流れ込むのであるが、下水処理施設の処理能力が技術的には実験的域を超えていないことと、諫早干潟が消失した結果、調整池の水質浄化機能を喪失してしまったため、調整池内の水質汚染が進んでいる。この地点からの眺めからも分かるように、調整池の水と諫早湾側の海水とは水の色が著しく異なる。 

4 本地点南西部に小江干拓地を見ることができる。小江干拓地先は本明川河口付近となり本明川から大量の土砂が流入する。既にこの付近には土砂が堆積しており、水深が著しく浅くなっている。
原告側
指示説明
 諫早湾の中程に横断している堤防が潮受堤防であり、延長が約7キロメートル、天端の標高は7メートルである。潮受堤防から右手方向に、調整池・内部堤防となり、潮受堤防により諫早湾の3550ヘクタールを締切るとともに、1710ヘクタールの調整池と1840ヘクタールの干陸地を造成する。干陸地では用排水施設及び道路が整った1335ヘクタールの優良農地を造成し、また、潮受堤防は、伊勢湾台風級の台風がもっとも危険なコースを通過したときに生ずる高潮を防ぐことができる。
 調整池は農業用水の確保に加え、諫早水害級の洪水を安全に貯留できる容量を有しており、また、調整池の水位を標高マイナス1.0メートルに低く管理していることで、スムーズな常時排水が行われている。
 調整池の水位の管理は、潮受堤防の北側と南側にある排水門の操作により行われており、潮受堤防の北側取付部に、排水門の操作を行う管理センターがある。
 なお、調整池と潮受堤防の外海側とでは、水の色が異なるが、これは、現時点では内部堤防が完成してないため、調整池内の波によって潟土が巻き上げられていることによる。
 また、調整池の水質については変動は見られるものの、ほぼ淡水化している。


いこいの村から潮受け堤防を望む


検証場所一覧ページに戻る 次の検証場所のページへ進む