農水省の諫早湾干拓事業縮小案に対する
環境NGOの声明

 2001年10月30日に、農水省が長崎県などに対して諫早湾干拓事業の縮小案を示したことを受け、財団法人世界自然保護基金ジャパン、財団法人日本自然保護協会、財団法人日本野鳥の会の環境NGO3団体が緊急に発表した共同声明です。


2001年10月30日

農水省の諫早湾干拓事業縮小案に対する環境NGOの声明

財団法人 世界自然保護基金ジャパン
財団法人 日本自然保護協会    
財団法人 日本野鳥の会      

 諫早湾干拓事業については、8月28日に武部農水大臣が、「自然と共生する環境創造型の農業農村整備事業の先駆的な取り組みにしたい」として、事業見直しを表明しました。
 私たち環境NGOは、農水大臣の事業見直し表明に大きな期待を寄せ、9月7日付で、「諫早湾干拓事業の見直しに対する環境NGOからの5つの提言」を農水大臣に送付し、事業見直しに対する具体的な提言を行ってきました。

 しかし、本日、農水省が、長崎県に対して提示した事業縮小案は、干拓地を西工区部分のみに縮小するだけのものでした。調整池の淡水化などは、当初計画から全く変更が無く、私たちが「5つの提言」で求めた環境保全対策は、全く考慮されていません。この縮小案は、事業見直しとして極めて不十分です。農水大臣が目指した「自然と共生する環境創造型の農業農村整備事業」の実体が、この縮小案だとすれば、私たちは失望を禁じ得ません。

 特に、事業縮小案における「環境への配慮」は、調整池の淡水化を前提としたものであり、諫早湾及び有明海の水質・底質・生物相の改善には役立たず、環境保全と呼ぶに値しないばかりか、「有明海異変」と呼ばれるほど深刻化した周辺海域の環境悪化に対する認識が欠如しているとさえ言わざるを得ません。
 かつての諫早湾は、国内でも最も豊かな内湾漁業が栄え、干潟・浅海域生態系として、国際的にも重要な海域でした。「海」だったところを「淡水の水辺」として整備することが、どうして環境保全と言えるでしょうか。調整池に海水を導入し、かつての豊かな干潟・浅海域を復活させること以外、諫早湾における環境保全の道は無いと言うことを、環境NGOの立場から強く訴えます。

 私たちは、ここで改めて、「5つの提言」を示し、諫早湾干拓事業を抜本的に見直し、必要な防災対策を総合的に検討した上で、諫早湾に豊かな干潟・浅海域の生態系を復活させるために、国および関係自治体が全力を尽くすよう求めます。


 「諫早湾干拓事業の見直しに対する環境NGOからの5つの提言」(詳細別紙−省略)

  1. 「環境への配慮」としては、諫早湾内での干潟生態系の復活を最重点とすること
  2. 西工区についても、農地造成をさらに見直し、干潟の復活を基本とした土地利用とすること
  3. 潮受堤防排水門の拡幅・増設などによる海水交換の促進を積極的に検討すること
  4. 干潟再生・水門開放調査と両立する防災対策を早急に実施すること
  5. 事業見直しの総合的な検討に市民や専門家の意見を広く採り入れること

以 上

※9月7日付「諫早湾干拓事業の見直しに対する環境NGOからの5つの提言」全文はこちら


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