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宛先:環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室内
有明海・八代海総合調査評価委員会事務局 御中

氏名:矢嶋 悟
職業:会社員
住所:東京都*****

意見:

4章4.(p.64〜)について
有明海の近年の環境異変の根本原因として「諫早湾干拓」を明記すべきです。

<理由>
 報告案では、有明海の底質泥化、貧酸素水塊の発生、赤潮の大規模化の原因として潮流速の減少が関与していることを認めました。これまでの有明海に関する審議会や農水省の報告には、諫早湾外の潮流の変化を明確に指摘したものはなかっただけに、画期的な検討結果と言えます。
 潮流速の減少の原因としては、主に干拓による地形変化が指摘され、1970年以前の干拓と、諫早湾干拓の2つに分けて影響の度合いのシミュレーション結果が示されています。潮流速減少の要因としては、干拓・埋め立て、潮位上昇、人工構造物、ノリ網の設置等が要因として挙げられ、各要因の寄与度は判断できないとしていますが、問題とされている有明海異変=1990年代の海域環境の悪化、漁獲量の激減を対象とするとき、その原因は干拓=諫早湾干拓であること以外は考えられません。
 4章においては、要因の検討が細かく行われているにもかかわらず、その全体的な結論は必ずしも明確ではありません。それは、底質泥化、貧酸素水塊、赤潮は総じて潮流速の減少が要因→潮流速の減少は干拓が主な原因→干拓は1970年代以前と諫早湾干拓の2つに分けて考えられる→1990年代の環境変化は・・・と帰納的に原因を探っていった最後で、「諫早湾干拓が原因」という最終的な結論を、報告書の文面上では伏せているからです。
 初期の評価委員会での議論の中で、個別の事業に関することは委員会の所掌ではない旨の環境省見解と委員長判断が表明されましたが、仮にそれが妥当だとしても、科学的に原因として指摘することは評価委員会の任務であり問題ないはずです。委員会が到達した大きな成果として、諫早湾干拓が有明海異変の根本的な原因であることを明確にと記述すべきです。

5章3.(p.78〜)
「諫早湾干拓」を原因と見立てた具体策を提言すべきです。

<理由>
 対策は基本的には原因から導き出されるものだけに、4章で根本原因としての「諫早湾干拓」を伏せているため、「具体的」な再生方策の項は、はなはだ抽象的な提言に留まっています。
 「(2)沿岸海域における環境保全、回復」では、「予防的措置の観点から海域の潮流速の低下を招くおそれのある開発を実施する場合、これに対して適切に配慮」と対策の対象を今後の開発に限定し、現在進行中の開発事業である諫早湾干拓事業には触れられていません。
 前ページ(p.78)の「再生に当たっての環境管理の考え方」では、「予想外の事態が起こり得ることをあらかじめ環境管理のシステムに組み込み、常にモニタリングを行いながら、その結果に基づいて対応を変化させる順応的な方法により、諸施策を進めていく必要がある」としています。しかし、諫早湾干拓事業のアセスメントの予測からすれば、まさに「予想外」の事態が有明海に発生しているにもかかわらず、諫早湾干拓事業の順応的な見直しを行わないことは、報告案のなかで矛盾しています。
 対策も「適切に配慮」などという曖昧な表現ではなく、評価委員会が現在進められている諫早湾干拓も含めて、開発に対する具体的な対応や、その科学的なガイドラインを示すことが求められています。

以上


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