まだ聞こえる生命の息吹
ムツゴロウ冬眠から覚める

 潮受堤防閉め切りからついに1年。生物が死に絶えたかに見える潮受堤防内側の諌早湾干潟だが、所どころで今年もムツゴロウが冬眠から覚め、干潟上に顔を出した。

 諌早湾北部、高来町湯江川河口では、3月に入り数百匹のムツゴロウが見られるようになった。去年に比べ少し痩せたように感じられるが、主食である潟表面の珪藻を食む姿や、縄張りを巡ってヒレを広げ争う姿など、かつての干潟を彷彿させる光景が見られた。湯江川河口は水が常に流れ込み、比較的いい状態で干潟が保たれている箇所がある。もちろん潮は一度も入っていないが、それでも生物が生き延びているのは、潟土に含まれた塩分のためと思われる。これは「潟の塩分は抜けにくい」ことの証明でもあり、もし新干拓地が出来た場合の営農の難しさを想像させる。

 一方諌早湾最奥部の小野島海岸では、いまだに多くのカニなどの生存が確認されている。3月に入り在諌早新聞記者によって、シオマネキやアリアケガニ、シチメンソウの新芽などの写真が報道された。歩いてみると、朝に掘ったと思われるカニの穴が観察でき、しぶとい生命の息吹を感じることができる。その横では内部堤防工事用の道路建設が始まり、重機やダンプがうなりを上げている。

 また干陸した干潟と調整池との水際は、多くの生物が生存し、潮が満ちてくるのを待っている。

 一刻も早い潮受堤防開放が求められている。


イサハヤ干潟通信第8号より転載*


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