アゲマキ通信 第3号(2003年8月20日)
青木智弘(諫早干潟緊急救済東京事務所)


干拓工事は今

 はや立秋も過ぎましたが、みな様いかがお過ごしでしょうか? 青木智弘@いさはや東京ボランティアです。引き続き、諫早湾を締め切っている潮受け堤防が撤去される日、あるいは潮受け堤防に導水門が構築されて干拓調整池が汽水化され水位が変動する日まで、がんばりましょう。

▲干拓事務所の職員から説明を受ける視察団の一行(7月8日)
 去る7月8日に「よみがえれ!有明海」訴訟関連のみなさんと、小沢和秋・衆議院議員の現地調査に同行し、諫早湾干拓の工事現場を見学してきました。

生石灰使用の問題

 有明海ではこの春、各地で原因不明の浮遊物が発生し、漁業などに深刻な悪影響を及ぼしました。各地で見られた浮遊物にはおそらく、いくつかのヴァリエーションがあると思われ、海棲生物の卵が核となったものもあるようですが、太田扶桑男氏によって、海草の死骸片と石灰が核となった浮遊物が発見されています。

 海草には、緑藻、紅藻、褐藻がありますが、褐藻はアルカリに弱く、石灰(Ca塩)は、干拓工事に由来するのではないかと疑われています。干拓工事に使われている生石灰(CaO)が、何らかの形で有明海の褐藻に悪影響を与え、石灰と褐藻の死骸片が核となって「なぞの浮遊物」になったと、強く懸念されているのです。

軟弱地盤の難工事

▲干拓地前面部の内部堤防工事現場(7月8日)
 潮受堤防内の水位−1m管理によって、人工的に、仮に陸となっている干拓工事現場では、ガタ土に特有の軟弱地盤によって、工事は難航しています。二反田川の延長線上に排水路をつくっているのですが、土の含水率は130%にもなるので、ぐにゃぐにゃです。地盤を固くしないと工事ができません。

 そこで排水路の工事では、深さ2〜3mまで、生石灰(CaO)が、1立方mあたり40kgも投入され、よく攪拌して地盤を固くしています。生石灰は、2002年度の工事には11000tつかわれ、2003年度は4000tつかわれる予定です。

 干拓工事の現場では、排水のpHは管理していますが、15000万tもの生石灰が使用され、環境にどのような影響を与えているのかは検証されていません。

生石灰となぞの浮遊物

 国や有明沿岸県の水産試験場などは、なぞの浮遊物を海棲生物の卵とし、大量発生の原因は不明としています。しかし、なぜこの春、大量に浮遊したのでしょうか? 干拓工事で使用されている生石灰などとは無関係なのでしょうか? 諫早湾の閉め切り以後に生じている、有明海の潮流潮汐の変化と、なぞの浮遊物は関連があるのでしょうか? 真相解明が待たれます。

  • ※「アゲマキ通信」は、諫早干潟緊急救済本部・東京事務所ホームページのコンテンツですが、会員個人が執筆しているので、団体の公式見解とは若干、内容が異なる場合があります。あらかじめご容赦ください。

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