市川二期・京葉港二期計画見直し案に対する意見書 市川二期・京葉港二期計画見直し案に対する意見書
猫実川河口域(区分1)は、波浪の流れが停滞しシルト・粘土分が多い地域ですが、補足調査によれば川からの有機物に対する水質浄化能力が高く稚魚・養魚の生育域として重要であることも報告されています。又この地域の埋め立てに際し、その利用土砂及び運搬を巡り新たな環境破壊が懸念されます。さらに、この埋立・人工干潟案では漁場回復や海の再生には繋がらない可能性が高いともいわれています。一方、直立護岸の解消・親水性のある空間の創出(海へのパブリックアクセスの確保)は、埋立・人工干潟によらなくても可能であると考えます。人工干潟については、環境庁も藤前干潟保全見解の中で否定しております。この見解は藤前独自の考え方ではなく、広く一般に適用されるものです。三番瀬の場合、既にある自然の干潟をわざわざ人工的に改変する必要性を見いだすことはできません。むしろこうした人工干潟は既にその9割を失ってしまた東京湾の干潟環境の再生にこそ使われるべきです。 この見直し案では、下水道終末処理場も規模を縮小しました。しかし、江戸川左岸流域下水道計画のために廃止するという三つの単独処理場を存続することにすれば、三番瀬を埋め立てずとも処理量確保は難しくないともいわれています。また、むしろ小規模処理方式の方が有効であるという報告もあります。これらのことから、この下水道終末処理場が必ずしもこの貴重な干潟を埋め立ててまで作る必要性はないと考えます。下水道計画を根本から見直す議論が期待されます。 私達が望んでいるのは、高速道路の橋梁のたもとにある人工的な緑地公園などではありません。もはや忘れてしまった数十年前の干潟の風景や温もりのある街・そして文化的な海と人とのつながりです。そのためには生物の豊富な生きた干潟が必要です。直立護岸の改変は必要ですが、埋立による方法ではなく自然を生かした水辺づくりが求められていると考えます。街づくり支援用地・公園緑地用地については、「海浜の開発は海浜でしかできないものに限る」という基準に照らせば、ここに作らなければならない理由はありません。更なる検討が必要と思われます。 この計画は、背後地域の交通渋滞の緩和及び背後地域からのアクセス確保・東京外郭環状道路とのネットワーク化を目的としたものですが、交通渋滞の緩和はその原因となっている既存施設の改良などでも対応できるのではないかと思われます。一時的な渋滞の緩和には役立ってもまた車の増加が予想され、車と道路整備のいたちごっこが繰り返されるだけでは根本的な解決にはなり得ません。この際、車社会から公共交通利用への転換を図る方向で首都圏の自動車専用道路ネットワークの根本的な見直しが必要ではないかと考えます。 私達もオブザーバーとして参加した第7回ラムサール条約締約国会議において、潮間帯湿地(干潟)保全の決議案が採択されたことは、補足調査によってその価値が認められたこの三番瀬についても広く保全することが国際的な責務であることを示唆しています。またこの会議においてはNGOの役割が強調され、市民参加の流れは国際的な常識となっています。見直し案に対する今後の議論は、三番瀬にとって重大な局面です。今後の議論には広く市民が参加し、より良い三番瀬保全の方策(人の利用と自然との共生)を共に考えてゆくことが期待されています。地元NGOとの話し合いなど行政と市民とのパートナーシップにより、最良の案を見いだすことができれば、三番瀬は全国のモデルとして評価されると思います。
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