市川二期・京葉港二期計画見直し案に対する意見書


諫早干潟緊急救済東京事務所では、下記の意見書を6月16日に
黒川 洸・策定懇座長、策定懇委員全員、林 雄二郎・環境会議座長、
沼田 武・千葉県知事に送付しました。


市川二期・京葉港二期計画見直し案に対する意見書


計画策定懇談会座長 黒川 洸 様
計画策定懇談会委員御一同 様

                          平成11年6月16日
                      諫早干潟緊急救済東京事務所

 東京湾三番瀬(市川二期・京葉港二期地区)計画について、6月9日に千葉県から見直し案が発表されました。千葉県に隣接する東京のNGOである私達は、三番瀬の問題を諌早湾干潟と同じく東京湾の豊かな自然環境を脅かす問題としてたいへんな関心をもって見守ってきました。私達は、6月19日の計画策定懇談会を前に県が心血を注いで大幅な縮小計画を提示したことは、評価したいと思います。しかし、まだ幾つかの疑問点があります。以下に述べるこれらの疑問点並びに意見について、次回6月19日の計画策定懇談会でご検討いただけますようお願い申し上げます。

1.市川二期計画の猫実川河口を中心とした埋め立ておよび人工干潟について

 猫実川河口域(区分1)は、波浪の流れが停滞しシルト・粘土分が多い地域ですが、補足調査によれば川からの有機物に対する水質浄化能力が高く稚魚・養魚の生育域として重要であることも報告されています。又この地域の埋め立てに際し、その利用土砂及び運搬を巡り新たな環境破壊が懸念されます。さらに、この埋立・人工干潟案では漁場回復や海の再生には繋がらない可能性が高いともいわれています。一方、直立護岸の解消・親水性のある空間の創出(海へのパブリックアクセスの確保)は、埋立・人工干潟によらなくても可能であると考えます。人工干潟については、環境庁も藤前干潟保全見解の中で否定しております。この見解は藤前独自の考え方ではなく、広く一般に適用されるものです。三番瀬の場合、既にある自然の干潟をわざわざ人工的に改変する必要性を見いだすことはできません。むしろこうした人工干潟は既にその9割を失ってしまた東京湾の干潟環境の再生にこそ使われるべきです。
 県によれば、この見直し案では環境への影響は非常に小さくなったと言われていますが、果たしてこの予測が何を根拠にしているのか、疑問に思います。埋立・人工干潟の必要性を議論した上で、改めてこの見直し案の客観的な科学的予測が必要であると考えます。

2.下水道終末処理場について

 この見直し案では、下水道終末処理場も規模を縮小しました。しかし、江戸川左岸流域下水道計画のために廃止するという三つの単独処理場を存続することにすれば、三番瀬を埋め立てずとも処理量確保は難しくないともいわれています。また、むしろ小規模処理方式の方が有効であるという報告もあります。これらのことから、この下水道終末処理場が必ずしもこの貴重な干潟を埋め立ててまで作る必要性はないと考えます。下水道計画を根本から見直す議論が期待されます。

3.街づくり支援用地・公園緑地用地について

 私達が望んでいるのは、高速道路の橋梁のたもとにある人工的な緑地公園などではありません。もはや忘れてしまった数十年前の干潟の風景や温もりのある街・そして文化的な海と人とのつながりです。そのためには生物の豊富な生きた干潟が必要です。直立護岸の改変は必要ですが、埋立による方法ではなく自然を生かした水辺づくりが求められていると考えます。街づくり支援用地・公園緑地用地については、「海浜の開発は海浜でしかできないものに限る」という基準に照らせば、ここに作らなければならない理由はありません。更なる検討が必要と思われます。
 また、港湾施設についてもその必要性について十分ご検討ください。

4.第2湾岸道路計画について

 この計画は、背後地域の交通渋滞の緩和及び背後地域からのアクセス確保・東京外郭環状道路とのネットワーク化を目的としたものですが、交通渋滞の緩和はその原因となっている既存施設の改良などでも対応できるのではないかと思われます。一時的な渋滞の緩和には役立ってもまた車の増加が予想され、車と道路整備のいたちごっこが繰り返されるだけでは根本的な解決にはなり得ません。この際、車社会から公共交通利用への転換を図る方向で首都圏の自動車専用道路ネットワークの根本的な見直しが必要ではないかと考えます。
 また、この見直し案では船橋海浜公園の真上を通るなど、三番瀬の環境(自然環境、人間が利用する上での環境や景観)への配慮が全く欠けたものとなっています。仮に第2湾岸道路が必要だとしても、建設省道路局長の国会答弁にあるとおり、必ずしも埋立は必要ではないと考えます。さらに内陸へのルート変更やトンネル化・湾岸道路の地下など三番瀬を埋めない建設方法を検討してください。

5.情報の公開と市民参加

 私達もオブザーバーとして参加した第7回ラムサール条約締約国会議において、潮間帯湿地(干潟)保全の決議案が採択されたことは、補足調査によってその価値が認められたこの三番瀬についても広く保全することが国際的な責務であることを示唆しています。またこの会議においてはNGOの役割が強調され、市民参加の流れは国際的な常識となっています。見直し案に対する今後の議論は、三番瀬にとって重大な局面です。今後の議論には広く市民が参加し、より良い三番瀬保全の方策(人の利用と自然との共生)を共に考えてゆくことが期待されています。地元NGOとの話し合いなど行政と市民とのパートナーシップにより、最良の案を見いだすことができれば、三番瀬は全国のモデルとして評価されると思います。
 そのためには情報の公開が不可欠であり、計画策定懇談会の議論は広く公開すべきです。傍聴や公聴会、議事録や討議資料全公開など、公開についての議論をもう一度してください。
 また、14日には県から「埋立予定地の土地利用の必要性をまとめた資料」が示されましたが、それぞれの項目についてその必要性を吟味するには一日ではとても足りないと思います。お互いに納得のゆくまで議論を積み重ねることが必要です。この資料を一般に公開すると共に、策定懇の議論もじっくり回数を重ねて下さい。

 最後に、次回の計画策定懇談会のなかで三番瀬見直し計画が、私達の意見を含めて十分議論されるよう重ねてお願い申し上げます。


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