渡り鳥の渡来地としての諌早湾干潟の重要性と
潮受け堤防締め切りの影響(要約)
花輪伸一,東梅貞義(WWF Japan)
古南幸弘(日本野鳥の会)
諌早湾干潟およびその周辺では232種の鳥類が記録されている。このうち136種(58.6%)がラムサール条約の対象となる水鳥類である。シギ・チドリ類は57種記録され,記録個体数は,有明海の他の地域を大きく上回るだけでなく、日本国内において第1位となっている。冬期には、シギ・チドリ類が4,000-7,000羽、カモ類が20,000−30,000羽、カモメ類が500−1,000羽、合計で25,000- 38,000羽の越冬記録があること、さらに、ズグロカモメなど4種の渡来数がそれぞれの個体群の1%を越えていることにより、諌早湾干潟はラムサール条約登録地の基準を十分に満たしている。また、シギ・チドリ類渡来地ネットワークの基準(個体群の0.25%)も、ダイシャクシギなど7種が満たしている。渡り鳥保護条約・協定では、232種のうち、日豪43種、日露169種、日中138種、日米84種が、それぞれ2国間で協力して保護すべき鳥類とされている。
しかし、潮受け堤防締め切り後の調査では、11種909羽(97.8.31),10種597羽(97.9.4)などの低い記録となっている。一方、前年の同時期には、19種1,726羽(96.9.1)の記録があり、また、9月上旬の記録数は例年 1,500羽程度であることから、今年の記録は以前の3分の1から2分の1に減少したと言える。これは、堤防締め切りによる干潟の乾燥化、底生生物の死滅、採食場所の減少が影響していると考えられる。
諌早湾干潟は、シギ・チドリ類を中心とする渡り鳥の渡来地、生息地として国際的に重要な干潟であることから、短期的には、排水樋門を開放し海水を入れて鳥類にとって好適な条件を回復し、中長期的には、重要な渡り鳥渡来地である干潟の保全を基調とした計画に変更すべきである。