低地の排水対策、潮受堤防の構造関係、
内堤の建設・干陸地造成の経費
高田 直俊(大阪市立大学教授;工学部)
1. 低地の排水対策
2. 潮受堤防の構造関係について
3. 内堤の建設・干陸地造成の経費
有明海沿岸の粘土地盤は、地盤工学的にみて日本(世界的にみても)最悪の地盤である。すなわち、自然含水率が高く、外的な撹乱を受けると強度が大幅に低下する。計画では、バーティカルドレーン(鉛直排水工法)を用いることになっている。
軟弱粘土上に土を盛ると粘土地盤の強度が低いために地盤破壊を生じる。地盤を破壊させない高さで盛土を行い、これで粘土が圧密して強度を増せば、その強度増加で支持できる高さの盛土を行い、圧密を待って次第に盛土を高くしていく。このような段階盛土にはかなり長い時間がかかる。さらに、海上施工の場合は船で盛土を運べるから盛土の運搬・撒出しには問題はなく施工能率も良いが、陸上施工では搬入路にも盛土を用いることになるから、低能率で長期に及ぶ施工が必要になる。
以上のような施工条件で、この難工事が平成12年に完工できるか。またその経費見積もりはどうか。おそらく、かつての干拓堤防工事と同様にきわめて長期にわたる工期と巨額の経費を必要とする。
また、干拓地に作る道路・水路・水門・ポンプ場のいずれもが、このような軟弱粘土地盤上の難工事になるが、これらの建設計画(施工法・工期)と経費見積もりはどうなっているか。経費と工費によって今後の干陸地の利用計画、つまりこの事業の将来は大きく変わるはずである。