干拓地の堤防の耐震性の問題点

1.干拓地の堤防の耐震性の問題点

 一般に、内湾の海底下には、超軟弱な粘性土層がきわめて厚く発達している。したがって、干拓地の堤防は多くの場合、堅固な岩盤上に設置することができず、地盤改良をして設置せざるを得ない。
 しかし、技術上の限界から、干拓地の堤防は、ダムなどと比べて耐震性が著しく劣るものとなる。干拓地の地盤は超軟弱なため、地震時に液状化現象を引き起こしやすい。そのため、地盤が数メートルも側方に移動することがあり、堤防が損壊に至ることも多分にありうる。

2.設計水平震度0.084の当否について

 本件潮受け堤防の設計水平震度0.084という数値は、標準設計震度0.2×地域別補正係数0.7×重要度別補正係数0.5×地盤別補正係数1.2という計算式によって求められたものである。しかし、これは現行(1982年)の耐震設計法によるものではなく、建設省案(1978年)にもとづいている。両者にはかなり大きな差があり、後者による0.084という数値は前者にもとづいて再計算されなければならない。なお、潮受け堤防と同様の土構造物であるアースダムは0.12ないし0.25であるから、本件の0.084は非常に甘い数値である。

3.耐震性の問題点

 潮受け堤防の支持地盤が、地盤改良によって、どの程度強化されたのか示されていない。また、地震時に支持基盤が液状化を引き起こす可能性について検討されていない。さらに、本件干拓地が、九州北部において大陸プレート内地震がもっとも多く発生している別府ー島原地溝帯の西端に位置し、地震危険地帯といえるが、事業者の認識が欠如している。本件干拓地が地震空白地帯であることは、むしろ地震危険度が高いとみなすべきである。海底活断層についても、存在しないのではなく、存在が確認されていないとみるべきである。

4.調整池の堆砂の問題

 事業者は、調整池の堆砂の問題を著しく軽視している。干拓地の背後には、多良岳などの火山体が存在するが、これらを構成する岩石のうち溶岩は露頭ではボロボロになっていることが多く、集中豪雨時には本明川などにそって土石流が発生するおそれがある。その場合には調整池は堆砂で埋没する可能性がある。


TOP PAGE | INFORMATION | REPORT | LINK | LIBRARY