イサハヤを考える議員の会の質問書に対する
農水省(政府委員室)の回答
1−1について
(質問)事業の計画内容と実施状況は、ラムサール条約の「賢明な利用指針=モントリオールガイドライン」及び「追加手続き=釧路手続き」に沿っているのか。違っている所があるとすればそれはなぜか。
(回答)ラムサール条約は、締約国は、その領域内の湿地をできる限り適性に利用することを促進するため、計画を作成し、実施すると規定しており、政府としては、日本国内の湿地をできる限り適性に利用することを促進するため、環境基本計画等の諸計画を作成し、施策を実施している所であります。
諫早湾干拓事業は、生産性の高い農地の造成ならびに高潮、洪水及び排水不良に対する防災機能の強化を目的として実施しているものであり、この事業により地域にもたらされる効果は極めて大きく、着工に先立ち、環境影響評価を実施し、その後も環境モニタリングを継続しているほか、事業の実施に当たり、環境に配慮した工法を採用するなど、適正な利用の観点にも配慮したものとなっています。
2−2について
(質問)環境影響評価は、生物多様性評価が十分に行われていなければ意味がない。関連条文規定、評価項目、指標などに対応しうる環境影響評価だったのか。
→生物多様性条約14条では、細かく環境影響評価のあり方を定めている。一般的に手続きを定め実施すること、計画について評価する事、個別事業について評価とミティゲーションを行うことをそれぞれの段階について行っているか?
(回答)諫早湾干拓事業に係る環境影響評価は、環境庁長官により閣議アセス(「環境影響評価の実施について」S58.8閣議決定)の「相当手続等」に指定された長崎県環境影響評価事務指導要領及び公有水面埋立法に基づいて実施しており、長崎県の審査を経るとともに、建設省、運輸省及び環境庁による所要の手続が行われています。
2−3について
(質問)鳥類と底生生物に関して、次の報告書の原本を提出されたし。
「諫早湾干拓事業鳥類行動調査委託事業報告書」
九州農政局諫早湾干拓事業所
平成2年度及び平成4〜7年度(5冊)
「諫早湾干拓事業浅海域生態系追跡調査業務報告書」
九州農政局諫早干拓事業所/財団法人国立公園協会
昭和61年度〜62年度及び平成元年度〜7年度(9冊)
(回答)それぞれの調査結果の概要は別紙1及び2の通りです。
4−5及び8について
(質問)設置予定の8台の排水ポンプの容量、揚程〜流量特性を示されたい。
新しく設置される予定の8基の排水ポンプの容量はいくらか。
(回答)排水機の計画は下表のとおりです。
なお、流量特性(ポンプ特性)等は工事実施に当たり詳細な設計を行う段階で決定することとしています。
全排水量 (m3/s) |
揚程(m) | 台数 | |||
実揚程 | 全揚程 | ||||
中央排水機場 | 洪水用 | 43.0 | 5.7 | 6.2 | 4 |
常時用 | 1.0 | 4.7 | 5.2 | 1 | |
小江排水機場 | 洪水用 | 3.4 | 4.1 | 4.6 | 2 |
常時用 | 0.1 | 3.5 | 4.0 | 1 |
4−6について
(質問)造成地外から流入する水量(最大雨量×集水面積)を示されたい。
(回答)造成地外から造成地内への流入は計画していません。
4−7について
(質問)洪水時の1分おきの調整池への全流入量データ、潮汐データを示されたい。
(回答)事業計画での排水計画における、洪水時の造成地内から調整池への全排水量は、中央工区43m3/s、小江工区3.4m3/sとしています。
なお、この排水量は潮汐と直接的な関係はありません。
5−9について
(質問)中間報告書に出されたボーリング調査の原寸資料。
(回答)別紙3の通りです。(注:別紙3は専門的な地質の断面図で、かなり重い画像データです)
5−10について
(質問)有明海沿岸の粘土地盤は地盤工学的にみて、地盤含水率が高く、外的な撹乱を受けると強度が大幅に低下する。サンドコンパクションパイル法の施行方法を示されたい。また、それによる地盤改良の効果を支持力で示されたい。
(回答)サンドコンパクションパイル工法は、粘性土地盤にケーシングパイプを貫入して砂を供給し、砂を締め固めながらケーシングパイプを引き抜くことにより砂杭を設けるもので、砂杭のドレーン効果による粘性土の圧密沈下の促進及び砂杭のせん断強度の補強により地盤の支持力を高めるものです。この工法は、現在、我が国で最も多く使われている地盤改良工法の一つとなっています。
5−11について
(質問)排水門基盤の盛り土データ資料を提出されたし。
(回答)排水門の基盤には盛り土は行っていません。
5−12及び5−15について
(質問)本件事業の干拓予定地に作られる道路、水路、水門、揚水機場のいずれもが、軟弱地盤上の工事になるが、これらの建設計画と経費見積もりを示されたい。
潮受け堤防内の道路計画、水路、水門、排水机上計画と建設計画を示されたい。
(回答)干拓予定地内の道路、水路等の建設計画は、道路(幹線、支線)約78km、用・排水路(幹線、支線)約78km、揚水機場4ヵ所、排水機場2ヵ所です。
これらを含む地区内整備に要する経費については、平成9年度以降約300億円を予定しています。
5−13について
(質問)本件事業の干拓予定地の地盤高をいくらに見積もっているか?干拓地は表層の乾燥と水位低下による圧力増加で圧密沈下することを考慮にいれているか。
(回答)事業計画では、受益地の最低標高を−2.5mとしています。
5−14について
(質問)内堤防の地盤改良の施行法を示されたい。また、サンドコンパクションが使えない場合、圧密時間をどう見るか。最終沈下量の見込みはどう見積もっているか。
(回答)内部堤防の地盤改良の施行方法としては、バーチカルドレーン(vertical
drain)工法を計画しています。具体的な内容については、試験施行を行い決定することとしています。
5−16について
(質問)内堤防建設の際の工事用道路はどうするのか。
(回答)必要な工事用道路を設置し、内部堤防の築堤を行うこととしています。
6−17について
(質問)本事業にかかる費用対効果の評価案と、その算出根拠と元になるデータをすべて提出されたし。
(回答)事業計画策定時(S61)において、事業施行後に見込まれる年効果額は、8512百万円であり、農水省が定める方式による妥当投資額は1385億円です。
一方、事業計画策定時(S61)における本事業の総投資額は1350億円であり効用が費用を上回っています。
6−18について
(質問)九州農政局『国営諫早湾土地改良事業計画書(諫早湾干拓)』の51pにある「第10章・効果」には、「生物生産効果」「国土造成効果」「災害防止効果」「維持管理節減効果」「その他」の5区分により「増加見込み効果額」及び「増見込み所得額」が記されている。5区分ごとの算出根拠の詳細を示されたい。また、上記の効果に変更がないか。変更があれば、現在の数値を示されたい。
(回答)「増加見込み効果額」及び「増加見込み所得額」の詳細は下表のとおりです。
増加見込み 年効果額 |
増加見込み 年所得額 |
|
(1)作物生産効果 野菜類 酪 農 肉用牛 |
1,937 461 242 |
2,880 652 312 |
(2)国土造成効果 | 1,478 | − |
(3)災害防止効果 | 4,040 | − |
(4)維持管理費節減効果 堤防施設 用排水施設等 その他 |
△31 △89 △25 |
△31 △89 △25 |
(5)その他 (幹線道路の効果) |
499 |
− |
合 計 | 8,512 | 3,699 |
6−19について
(質問)九州農政局『国営諫早湾土地改良事業計画書(諫早湾干拓)』の「第10章・効果」のうち、「災害防止効果」4040百万円とある。これは年額か。年額とすれば、この災害防止効果は、何年に1回の確立で発生する効果であるか。
(回答)効果額は年額です。
この額は、伊勢湾台風級の高潮と諌早大水害の降雨が同時に発生するような災害が、潮受堤防の耐用年数内に1度発生することを想定し、それを年額に直したものです。
6−20について
(質問)上記の計算根拠は、議員の会6月18日提出の「国営諫早干拓事業」に関する質問主意書の十の4に関する答弁書と同じ計算根拠に基づくものか。同じでないとすれば、主意書の質問十の4に関する計算根拠を示されたい。
(回答)同様の算出根拠に基づくものです。
6−21について
(質問)同じく、十の4に関して、実際に防災効果が生まれる面積、戸数は現在変化しているか。要るとすればどのように変化しているかを具体的数字で示されたい。
(回答)現時点では調査していません。
6−22について
(質問)九州農政局『国営諫早湾土地改良事業計画書(諫早湾干拓)』の「第10章・効果」のうち、「生物生産効果」の算出根拠に関して、営農計画を示し、営農モデル類型ごとの農業世帯の収支を示されたい。
上記の、営農計画及び営農モデル類型ごとの農業世帯の収支は、現在変化しているか。変化があるとすれば、どのように変化しているかを具体的数字で示されたい。
(回答)作物生産効果と営農計画の生産額の算定根拠は同じです。
6−23について
(質問)『国営諫早干拓事業』に関する質問主意書の答弁書「十五の1、2、3及び7について」「十五の4について」「十五の5及び6について」において、工事別の内訳が「諫早湾」と「諫早湾(開畑工事等)」に大分類されているが、中分類、小分類があると思うが、中分類、小分類による(1)当初の総事業費内訳、(2)平成8年度末までの支出実績、及び(3)平成12年度の完成時の計画総事業費内訳を、それぞれ示されたい。
(回答)
当初の総事業費 | 平成8年末まで 支出実績 |
平成12年完成時の 計画総事業費 |
|
潮受堤防 | 440億円 | 約1046億円 | 約1190億円 |
開畑工事等 | 476億円 | 約33億円 | 約590億円 |
補償費その他 | 434億円 | 約491億円 | 約590億円 |
合計 | 1350億円 | 約1570億円 | 約2370億円 |
6−24について
(質問)平成8年度末までの支出実績について、大分類、中分類による各年度ごとの支出額を示されたい。
(回答)
全計 | S61 | S62 | S63 | H1 | H2 | H3 | H4 | H5 | H6 | H7 | H8 | |
潮受堤防 | 0 | 0 | 0 | 3 | 11 | 18 | 25 | 65 | 221 | 253 | 255 | 196 |
開畑工事等 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 | 16 | 3 | 0 | 0 | 3 | 3 |
補償費その他 | 19 | 2 | 61 | 79 | 79 | 77 | 69 | 17 | 16 | 16 | 19 | 37 |
合計 | 19 | 2 | 61 | 82 | 90 | 102 | 110 | 85 | 237 | 269 | 277 | 236 |
6−25、26について
(質問)工事費の内訳ごとに、国、県、市町村、農家等の負担となる財投借入金について、その利子率はどのようであるか?年度による違いがあればそれも示されたい。
県、市町村、農家などの負担となる財投借入金について、その利子率はどのようか。年度による違いがあればそれを示されたい。
(回答)財投借入金の利子率は別紙−4の通りです。
6−27について
(質問)現在の総事業費により完成された場合、国費支出も含めて農地の造成コストは10アールあたり何円になるか。
(回答)10アール当たりの造成コストは約600万円となります。
6−28について
(質問)上記(24)により算出される農家負担についてその元利償還額は10アールあたり何円になるか。また、その償還条件(償還期間等)はどのように予定され、農家の年償還額は何円か。
(回答)償還条件は償還期間25年(3年据え置き)であり、年償還額は10アール当たり約8万円となります。
6−29について
(質問)農地の分譲価格は、10アールあたり何円と予定(または想定)されているか。
(回答)10アール当たり約110万円と想定しています。
6−30について
(質問)干拓農地の分譲については、県の公社が一括購入してから、公社が個々の農家と分譲契約することになるのか。それとも、国(農水省)が直接個々の農家と分譲契約することになるのか。
(回答)土地配分方法については、農地造成工事完了後、実際に配分する前までに決定します。
6−31について
(質問)九州農政局『国営諫早湾土地改良事業計画書(諫早湾干拓)』の28pに、9つの揚水機施設が計画されているが、干拓事業完成後の農業用水料金または揚水機の電気代、維持管理等に係る費用は、総額いくらか。また、その農家負担は、農地10アールあたり何円と予定(または想定)されているか。
(回答)現計画策定時点(S61)では総額3,400万円/年と想定しています。また、運転費用の農家負担額は将来設立される予定の土地改良区の定款の定めるところによります。
6−32について
(質問)揚水機の耐用年数はどれだけか。設備更新の場合の金額(現在価格)、及び国・県・市町村・農家の負担割合はどうか。
(回答)揚水機の効果算定上の標準耐用年数は20年としています。
実際の施設の更新は、地区の営農や施設の維持管理の状況などを踏まえ、時期や整備水準などを検討の上、実施されることになります。
6−33について
(質問)建設省は、去る8月、中止するダム事業に投入してきた補助金について、地元自治体には返還を求めない方針を固めたことが報道されている。諫早湾干拓に限らず、一般論としての質問であるが、農水省が、仮に特定の土地改良事業を中止することになった場合、建設省と同様に、その事業に投入してきた補助金について、地元自治体に返還を求めないと理解してよいか。
(回答)事業の種別、効果の発現状況等から一様でないと思われますので、概括的にはお答えできません。