農水省が県に提示した諫干見直し案(2001年10月30日)
農水省は10月30日に長崎県に対して、諫早湾干拓事業の具体的な見直し案を初めて提示しました。以下はその説明資料です。
I.総合的な検討案の概要
経済財政諮問会議で公表した「食料の安定供給と美しい国づくりに向けた重点プラン」、農業農村整備事業の抜本的改革、九州農政局国営事業再評価第三者委員会の答申等を踏まえ、去る8月28日の大臣談話で示した
(1)防災機能の十全な発揮
(2)概成しつつある土地の早期利用
(3)環境への一層の配慮
(4)予定された事業期間の厳守
の四つの観点から総合的な検討を行ってきたが、以下により「農と緑と水辺の空間」を創出する。
1.防災機能の十全の発揮
2.概成しつつある土地の早期の利用
- 新たな干陸は行わない。
- 既干陸地のうち、農地としての整備が進んでいる区域(小江及び中央干拓地西側の大半)の畑地化を進めることとし、中央干拓地西側の大半に限定して堤防を設置(以下、「中央干拓」という)
- その他の干陸地については、現状を保全
- 農地の造成にあたっては、環境に配慮してヨシ等有機物の農地還元を行いつ除塩及び乾燥を促進し、その度合に応じて段階的に整備
3.環境への一層の配慮 図版1 図版2
周辺の水辺にヨシなどの水生植物が繁茂し、淡水性の動植物の生態系が定着している現状を踏まえ、調整池から旧干拓地に向けて、水域、湿地、干陸地、林帯、畑地の連続性を確保し、多様な生態系を形成するとともに、湿生植物などにより調整池の水質を保全
このため、「農と緑の水辺空間」の実現の方向に沿って、以下の3つのゾーニング(地帯区分)するとともに、それぞれのゾーンの特製に応じた環境配慮対策を実施
(1)水域(水辺空間)
(水質保全)
- 浅水域における巻き上げ防止や調整池の水質保全を図るため、工事が進捗している全面堤防の活用や中州の形成によるヨシ等の植生帯の創出
(流入水の浄化)
- 干陸地や背後地からの排水を蛇行した植生水路や礫間浄化水路で自然浄化
(2)現状保全区域(農と水辺をつなぐ遷移帯)
(現状の保全)
- 農と水辺をつなぐ自然空間として現状のまま保全
(自然環境の活用)
- 将来、自然環境の観察地域として活用
(多様な生態系の形成)
- 湿生植物、水生植物が繁茂し、多様な生物が生息
- 降雨による調整池水位の変動により、湿地帯において良好な環境を維持
(3)畑地区域(農と緑の空間)
(景観整備・生態系保全)
- 干拓地には景観と生態系の回廊(コリドー)機能を持つ林帯を整備
(環境配慮工法)
- 農地の造成に当たり、ヨシ等の有機物の農地還元を行いつつ除塩及び乾燥を促進し、その度合に応じて段階的に整備
4.予定された事業期間の厳守
- 上記の工事については予定された工期(平成18年度)内に完了
5.総工事費
- 総工事費は現計画を下回る約2,460億円に抑制
この結果、平成14年度から平成18年度までに必要となる事業費は、約240億円に止まる見込み
II.その他
- 農地面積は縮小するが、農家や農業生産法人への農地配分価格は現計画と同じく、約70万円台/10aとするよう努める。
- 長崎県をはじめ関係機関と所要の協議を行う。
- 潮受堤防の上部については、県による農道整備が行われ、農産物の輸送、地域の活性化に資することとなっている。
- 〔各種協議〕
ア)土地改良法:計画変更について長崎県と協議
イ)河川法:堤防の構造等について国土交通省と協議
ウ)公有水面埋立法:公有水面埋立承認の変更について長崎県と協議 |
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