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調整池水質保全計画案に対し意見書を提出

 諫早干潟緊急救済本部では長崎県が実施していた諫早湾干拓調整池水質保全計画(第2期)(案)[PDF] に関するパブリックコメント公募に対し、2月9日に、下記の意見書を諫早干潟緊急救済東京事務所と連名で提出しました。

 意見書では、水質保全計画の実現は疑わしく、干拓事業計画を見直して、調整池の淡水化を断念することを求めています。


諫早湾干拓調整池水質保全計画(第2期)(案)に関する意見

2003年2月9日

諫早干潟緊急救済本部
諫早干潟緊急救済東京事務所


水質保全計画の実現は疑わしく、干拓調整池の淡水化を断念すべきだ

 諫早湾干拓事業においては、1986(昭和61)年に実施された環境影響評価に対して、2001(平成13)年にレビュー(検証)が行われたが、その結果、環境影響評価の予測が大きく異なっていることが明らかになった。
 2001(平成13)年の『「諫早湾干拓事業環境影響評価レビュー報告書」に対する環境省の見解』では、調整池の水質について「全窒素、全りんの環境保全目標の達成が非常に厳しい」と指摘され、その後もたびたび環境省から懸念が表明されている。
 今回、諫早湾干拓調整池水質保全計画(第2期)(案)が示されたが、1986(昭和61)年の環境影響評価の予測が誤りが、抜本的には反省されていない。水質保全計画は撤回され、干拓調整池の淡水化は断念すべきである。

 干拓調整池の水質は、近年、徐々に悪化してきており、改善傾向が認められない。特にこの1年間は、COD(化学的酸素要求量)5mg/L、T−N(全窒素)1mg/L、T−P(全リン)0.1mg/Lという目標値を上回ることが過半である。ちなみに、この目標値そのものが、コイやフナならかろうじて棲める程度の水質であり、決して褒められた値ではない。農業用水質としては最悪の部類である。

  調整値の水質:
  http://www.maff.go.jp/soshiki/nouson_sinkou/isa_haya/3-3-2chouseichisuisitu.htm

 このような場合、調整池の淡水化を含めて、干拓事業全体を抜本的に見直すべきだが、2002(平成14)年に行われた事業計画の縮小は、抜本的な見直しとは言えない。水質の推移が、淡水化実施の前提となる1986(昭和61)年の予測と大きくかけ離れてしまった以上、淡水化そのものを断念すべきだ。
 干拓事業計画の縮小に先だって、再度、環境影響評価が行われてはいるが、1986(昭和61)年の環境影響評価と同様、予測を大きく誤ってしまう可能性は高い。そのような懸念が大きい以上、諫早湾干拓調整池水質保全計画(第2期)(案)も実現しそうにない。
 保全計画(第2期)(案)は、2007(平成19)年に目標値を達成することを目指してはいるが、これまで計画変更の度、水質の目標達成期限は先延ばしにされてきており、第二期保全計画(案)も、さらなる修正を迫られるのではないか。
 また、第二期保全計画(案)は、「2007(平成19)年度末の生活排水処理施設整備目標人口(流域市町計)下水道33,300人、農業集落排水施設17,096人、合併処理浄化槽11,301人」としているが、約4割の増加見込みは実現の可能性がはなはだ疑わしい。必ずや下方修正を迫られるであろう。
 さらに、生活排水対策、底泥の巻き上げ抑制対策として水面下の潜堤の設置・及び潜堤上のヨシの植栽等の調整池内の浄化対策、民間の事業所が負担する廃水処理対策など、実施にかかる費用が明らかでない。
 干拓事業に関わる水質対策を、なぜ、国、県、市町、さらに民間までもが、わざわざ別途、負担しなければならないのか。その総額や民間の負担、負担しなければならない根拠が不明確であり、この点だけでも断固、許されない計画である。
 
 そもそも調整池は、元来、干潟・浅海だった場所で、そこを人為的に淡水化し、水位の一定管理の下、干潟の浄化能力も失ってしまったことに、水質悪化の主因がある。これら根本の原因を解決せずに、水質の回復はあり得ない。淡水化のまま水質改善を図ろうとし、ヨシなどを植栽するというのは本末転倒である。
 第二期保全計画(案)は、「一般的に調整池のような閉鎖的な湖沼においては、水理特性等からして水質汚濁が徐々に進行することが考えられる」(P48)などと指摘しているが、ならば閉鎖的な湖沼そのものを人造することをやめるのが筋ではないのか。
 岡山県児島湾では、同様の淡水湖を造成したが、1961(昭和36)年の利水事業竣工後は長年、水質の悪化に苦しみ続けている。1991(平成2)年には、かんがい期の平均で、CODが11mg/Lを超えてしまった。
 水質改善のために、沿岸流域は生活排水対策などに追われているが、加えてさらに1992(平成4)年より国営総合農地防災事業を実施して330億円を投じている。なおもしかし、2000(平成12)年、かんがい期のCODは、平均で8mg/Lを上回っている。
 このような先行事例を見ると、海だった場所を湖にすることの愚が明らかである。

  国営農地総合防災事業「児島湖沿岸地区」(水質障害対策事業)
  http://www.chushi.maff.go.jp/nnjigyou/osirase/saihyou14/1kiso.pdf

 諫早湾において、児島湾の愚を繰り返すべきではない。本来、海だった場所は、海に戻さない限り、その水質は改善しないだろう。水質保全計画は撤回され、干拓調整池の淡水化を断念すべきである。

以上


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