農水省、清水建設、熊谷組に前面堤防着工を抗議
諫早干潟緊急救済本部、同東京事務所、有明海漁民・市民ネットワークは、8月12日に強行された諫早湾干拓事業の前面堤防着工に抗議し、8月14日に以下の抗議声明を発表しました。8月15日には東京・霞ヶ関の農水省前で、登庁する職員に声明文のビラを手渡すなどの抗議行動を実施しました。
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▲熊谷組本社前での抗議行動 |
また、前面堤防工事を進めている清水建設と熊谷組に対しても、工事の中止と事業からの撤退を求めて、8月20日には清水建設の本社前、22日には熊谷組の本社前で、抗議のビラを配布する活動を行いました。
●農林水産省に対する抗議声明
2002.8.14
農水大臣 武部勤様
諫早干潟緊急救済本部
諫早干潟緊急救済東京事務所
有明海漁民・市民ネットワーク
8月12日、農水省は、有明海沿岸漁民や全国の市民の反対を押し切って、諫早湾干拓・前面堤防を強行着工した。しかも、漁民有志による監視行動の隙をつき、さらに国会、マスコミさえも欺いて工事を強行したことに、強い憤りを禁じ得ない。
前面堤防の建設は、ノリ第三者委員会が求めた中長期開門調査を不可能にするばかりでなく、諫早湾の干潟生態系、有明海全域の環境回復を永遠に不可能にするだろう。まさに、潮受け堤防の閉め切りに次ぐ「第二のギロチン」であることを、私たちは再三にわたり訴えてきた。そして、調査の結果如何では潮受け堤防の撤去も視野に入れなければならない、と言及してきた。
一方、佐賀・福岡・熊本の3県漁連も工事反対を確認し、去る7日農水大臣に要請したばかりである。にもかかわらず、こうした声を無視して工事を強行することは、調査に期待を寄せた漁民に対する裏切り行為であり、断じて許せない。
そもそも、沿岸漁業の振興をはかり漁業者の暮らしを守ることが、農水省本来の仕事ではなかったか。漁民ばかりでなく有明海沿岸の地域経済さえも揺るがしている“有明海異変”の主因が諫早湾干拓事業であると想定されている中、その検証調査を不可能にする工事を強行するとは、一体どういうことか。農水省には、有明海を見殺しにしているという罪の意識はないのか。漁民はどうなってもいいというのか!
大体、事業完成を急ぐ理由はないはずであり、2006年度の事業完了という長崎県との矛盾した約束は、有明海再生という緊急の課題に対応すべく直ちに見直すべきである。権利者である漁業者の声を背景にした3県漁連の「工事反対」の意志は、4/15「合意」が無効であることを示しており、もはや錦の御旗ではない。
また、農水省がこの春に示した開門総合調査では、環境悪化の緩和という意義も兼ね備えた中長期開門調査の目的には不十分であることは言うまでもない。
以上、私たちは、前面堤防工事強行に対し厳重に抗議するとともに、直ちに工事を凍結し、中長期開門調査の早期実施を強く求めるものである。
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●清水建設、熊谷組に対する抗議ビラの内容
有明海異変の主因は諫早湾干拓事業!
清水建設と熊谷組に働くすべての社員の皆さん。私たちは、漁業不振に陥っている有明海を再生させることを目的に、沿岸漁民の支援活動をしている東京の市民グループです。
有明海では今、魚介類はもとより、最も富栄養化に強いとされたノリ養殖にまで漁業被害が及んでいます。諫早湾干拓事業の工事着工と共に湾内の二枚貝が採れなくなり、とりわけ97年の潮止め工(ギロチン)以降というもの、諫早湾のみならず有明海全体の生態系に異変が生じています。それは諫早干潟の水質浄化機能が失われたことと潮受け堤防の存在が有明海の潮流潮汐を弱めたことに起因して、諫早湾が恒常的な貧酸素水塊と赤潮の発生源になったためと言われています。農水省自らが設置した第三者委員会も昨年12月、この仮説を認めたうえで数年間の開門調査による検証の必要性を提言しました。この調査は干潟を再生させつつ行うものであることから、同時に環境改善にも役立つと期待されていたものです。潮受け堤防の撤去要求を農水省に「調査中だから」と拒否されてきた漁民にとって、この開門調査は有明海再生に向けての最後の望みでした。
「第二のギロチン」の執行人となった
清水建設・熊谷組は「企業市民」たりうるのか?
ところが農水省は、自らの事業が環境破壊の元凶と検証されるのを恐れて、この開門調査を行わずに事業を完成させようと目論み、内部堤のうち手つかずだった前面堤防工事の入札を、漁民の反対を押し切ってこの7月強行しました。これを落札受注したのが清水・熊谷両社です。この工事によって旧干潟が水域から遮断されると、干潟の再生はもとより専門家が提言している開門調査さえも不可能になります。このため過日私たちは両社の総務部長に面会して、受注を返上してほしい旨お願いをしました。しかし「上に報告する」(清水)と言いつつその報告先は農政局であったり、「国策だから」(熊谷)として闇雲にお役所に追随しようとするその姿勢からは、両社は独自の価値判断も出来ない会社ではないかとの危惧を禁じ得ませんでした。そして遂に、去る8月12日、両社の下請け企業はこの工事に着手したのです。有明海の環境と沿岸漁民にとって、この工事はまさしく死刑執行を意味するものであり、第二のギロチンと言わねばなりません。両社は薬害エイズにおけるミドリ十字と同様、確信犯的に反社会的な役割を担っています。国・農水省と共にその責任は厳しく問われなければなりません。
両社のホームページでは共に、「企業市民の一員として、建設業の一員として地球環境の保全と、よりよき環境の創造に努めることにより、持続可能な社会の構築に貢献する」(清水・地球環境憲章)、「企業市民としての自覚をもって…社会の常識に反することは行わない」(熊谷・社長訓示)と「企業市民」が標榜されています。しかし理不尽な環境破壊事業に直接手をくだし、有明海の漁民を食い物にしたことで、すでに市民社会からの信用は完全に地に墜ちたと断ぜざるを得ません。
社名に悪評がたっても違法でさえなければよいのでしょうか。予定価格に対する落札価格が両社ともに98.3パーセントというのは偶然でしょうか。そもそもこの異常に高い数値それ自体が、企業市民の常識からは遠くかけ離れたものであり、巷間の談合疑惑のもととなっているのです。
私たちは、両社が真の企業市民として再生したとき、有明海も必ずや再生するものと信じます。諫干事業からの撤退を切にお願いするものです。
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