干拓工事再開に対する抗議声明と抗議行動
1997年の「ギロチン」に匹敵する暴挙! 工事は即時中止を!

 諫早干潟緊急救済本部、諫早干潟緊急救済東京事務所では、1月9日に強行された諫早湾干拓事業の工事再開に対し、1月10日、下記のような抗議声明を発表し、農林水産大臣と九州農政局長に対して提出しました。

 また、1月11日朝には、諫早干潟緊急救済東京事務所のメンバーが、霞ヶ関の農水省前で横断幕を掲げ、登庁する職員に対して声明文のビラを手渡すなどのアピール行動を行い、事業の即時中止や縮小見直し案の撤回、事業の凍結と抜本的な再見直しを訴えました。

 


平成14年1月10日

農林水産大臣 武部 勤 様
九州農政局長 大串 和紀様

諫早湾干拓事業の工事再開に対する抗議声明

             諫早干潟緊急救済本部代表     山下八千代
             諫早干潟緊急救済東京事務所代表  陣内 隆之

 昨日、農水省は、有明海の窮状を訴え工事再開断念を必死に求める漁民・市民の声に真正面から答えることもできないままに、その背後からだまし討ちのように工事車両を搬入させるという姑息なやり方で、昨年2月より中断していた諫早湾干拓事業の工事を再開した。
 私たちは、こうした卑劣な手段を用いてまで、有明海見殺しの意志を示した農水省によるこの暴挙を許すことはできず、ここに厳重に抗議する。

● 今回の工事再開は、昨年暮れに成案となった縮小見直し案に基づくものであるが、この成案は調整池の淡水化や西工区の農地造成を前提としたものであり、有明海再生に不可欠な諫早干潟の復元や潮汐・潮流の回復に全く寄与しない小手先の見直し案による工事再開を、私たちは断じて認めることはできない。

● 今回、本体工事の一環として着手した小江工区の陸上工事は、新たに造成する農地の排水対策に過ぎず、調整池への排水量を増加させ水位上昇を速める点で、背後地住民の防災対策としてはむしろ有害である。この工事を「防災工事」と呼ぶのは詐欺に等しい。

● そもそも、元々の農水省の説明では、潮受け堤防の完成をもってこの事業による背後地防災対策は完了したのではなかったか。「地域住民の防災のため」に、中断した工事の再開が必要であるかのような農水省の説明はペテンであり、むしろ農地造成は、調整池の面積及び貯水容量を減少させるため、地域の防災の点では百害あって一利もない。事業推進のために、地域住民の不安をあおるような農水省の姿勢を、私たちは絶対に許すことはできない。

● 昨年暮れ、有明海ノリ不作等対策関連調査検討委員会は、有明海の環境悪化と諫早湾干拓事業の因果関係を認め、数年間にわたるできるだけ長く大きい開門が必要と結論付けた。農水省自らが諮問し、委員会見解を尊重することを約束したのであるから、当然長期開門調査を行うため、大きな水位変動と海水の交換を確保し、再生される干潟面積を増やすような事業見直しを再度早急に行う責務が農水省にはあるはずである。
 今回の工事再開は、明らかにこの委員会見解を無視し、自らの責任を放棄するものであり、断固として認められない。「事業と調査は切り離して考える」との説明は全くの詭弁である。なりふり構わず事業を推進する農水省や長崎県当局は、将来、有明海を死の海にさせた張本人として断罪され続けるであろう。

● 農水省は、工事再開の理由を、平成18年度の完成を目指して工事を急ぎたいためだとしているが、縮小見直し案の費用対効果計算など、土地改良法上必要な手続きを踏まえずに事業を進めることは違法である。しかも、有明海ノリ不作等対策関連調査検討委員会の求める長期開門調査を尊重する気があれば、平成18年度の事業完成が無理であることも明らかである。いま必要なのは事業自体の再見直しであり、工事再開や事業継続ではない。

● 農水省が、早くから事業の根本的な見直しに踏み込んでいれば、これほど事態が深刻化することも、工事が1年近くも中断することもなかったはずである。事業の影響で生活を左右される漁業者・地域住民を弄び、双方の対立を煽ってまで事業推進に拘泥したことが混乱の原因であり、農水省の責任はたいへん重大である。

 有明海の見殺しとなる今回の工事再開は、まさに「ギロチン」と称された潮受け堤防の閉め切りにも匹敵する暴挙である。私たちは、これに断固抗議するとともに、直ちに工事を中止することを要求する。そして、干潟復元や潮流・潮汐の回復など有明海再生につながる事業の抜本的見直しを、早急に行うよう求めるものである。


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