事業見直しと水門開放調査に関する意見広告
諫早干潟緊急救済本部が1月4日の毎日新聞長崎版に掲載

 諫早干潟緊急救済本部と同東京事務所は、2001年10月31日の西日本新聞、11月2日の毎日新聞に続いて、3回目の意見広告を2002年1月4日の毎日新聞(長崎版)に掲載しました。
 内容は以下の通りで、2001年12月にノリ不作第三者委員会が出した水門開放調査の提言を尊重し、1月からの工事再開を凍結して事業の抜本的な見直し作業を行うこと、水門開放調査の準備と地域の防災対策に早急に着手することなどを求めています。

 今回の新聞広告も、全国の多くの支援者からのカンパによって実現しました。また、かつての諫早湾の生き物の写真を、吉田幸男さんからご提供いただき掲載することができました。皆さまのご協力にお礼申しあげます。

拝啓 農林水産大臣 武部 勤 様
「水門開放調査と諫早湾干拓事業は切り離して考える」なんて、あまりにも無責任です。

有明海の環境と地域社会の再生のために、
諫早湾干拓事業を根本的に見直し、
水門開放調査に全力で取り組む決断が必要です。


●ノリ第三者委員会が、諫早湾干拓事業と有明海異変の因果関係を認めた以上、事業の工事は全て凍結すべきです。

 昨年末に有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(ノリ第三者委員会)は、「諫早湾干拓事業は、有明海全体の環境に影響を及ぼしていると想定される」と明言しました。
 振り返れば、昨年1月、急速に深刻化したノリの色落ちをきっかけに、有明海の環境悪化と諫早湾干拓事業の因果関係を指摘する声が強まり、ノリ第三者委員会が設置されました。昨年8月には、「時のアセス」(事業再評価)の第三者委員会も、事業によって失われた広大な干潟の水質浄化機能が事業のマイナス効果として考慮されていないことを問題として、「環境への真摯かつ一層の配慮を条件に事業を見直されたい」との答申をまとめていました。
 今回のノリ第三者委員会の意見によって、「有明海の自然環境に著しい影響を及ぼすものではない」とした環境アセスは完全に否定されたのです。
 有明海の環境に悪影響を与えることが認められた以上、諫早湾干拓事業の工事は全て凍結するのが当然です。危険性を知りながら事業を進めるとしたら、薬害エイズや狂牛病問題と同じ過ちを繰り返すことに他なりません。

●小手先の干拓事業縮小は無意味です。有明海再生と地域の防災等の対策を早急に実施すべきです。

 農水省が先に示した事業縮小案は、防災対策を求める地元住民にも、有明海再生を願う漁業者にも大きな失望と不安を与えました。中途半端な縮小案で問題が解決されるとは誰も信じていないのです。
 地元住民が本当に必要としている低地排水不良対策や、農業用水の確保などは、諫早湾干拓事業以外の方法で対応が可能です。一方、有明海の再生には干潟を復元し、潮流・潮汐を回復させるだけの、事業の根本的な見直しが不可欠です。問題は、干拓事業のみを唯一の方法として地元住民に押しつけ、有明海の環境悪化が深刻化した後も事業継続に固執し、無為に時を過ごした農水省の対応にあります。
 「水門開放調査と干拓事業は切り離して考える」との農水省の説明は全くの詭弁であり、地元住民や周辺の漁業者の生活を無視して、事業の推進に拘泥する農水省の姿勢を象徴するものだと言えます。

●佐賀では、干潟保全と防災対策の両立に取り組んでいます。

 諫早と同じく有明海に面する佐賀平野でも、低平地が多く、干満の差も5m以上になるため、高潮や低地の排水不良対策が重要な課題ですが、高潮には総延長150kmに及ぶ堤防と防潮水門で対応し、排水不良には、堤防・樋門・排水路の整備とポンプによる強制排水で対応しています。八田江川の防潮水門は、平常時は開放され、河口から約8kmも潮が上り、河床にガタ土の堆積も起こりますが、これを県などの事業で重機浚渫しています。
 福岡県の柳川市、大川市、大和町、佐賀県の鹿島市など、有明海沿岸の他地域は、干潟保全と防災対策の両立に取り組んでいます。諫早湾沿岸でも、全ての堤防や樋門が老朽化している状態ではありませんから、森山町など整備の必要性の高い地域から、優先的に国や県が手当をすべきです。

●今日の混乱は行政の方針転換が遅れた結果に他なりません。水門開放調査に必要な工事に直ちに着手すべきです。

 干拓事業の工事が中断されたことは、有明海に新たな悪影響を及ぼす懸念があったことから、当然といえます。一方で、水門開放調査を行うことは、昨年3月から提言され、そのために相当の対策が必要であることは当時から分かっていました。しかも、それは、老朽化した樋門の改修など、本来行われてしかるべきものも含まれています。
 昨年3月時点で事業の方針転換を明確にし、水門開放調査に必要な防災工事等に速やかに着手していれば、これほど工事中断が長引き、地域社会に影響を及ぼすことは避けられたのではないでしょうか。農水省として、事業の根本的な見直しへの方針転換が遅れたことが全ての原因といえるでしょう。

●水門開放調査を、諫早湾・有明海と地域社会再生の第一歩とすべきです。

 農水省は、ノリ第三者委員会の意見を尊重して水門開放調査を実施することは、従来から認めてきましたが、実態としては、短期調査で形だけを整え、諫早湾干拓事業を計画通り推進しようと目論んでいたことは明らかです。しかし、ノリ第三者委員会が、有明海異変と諫早湾干拓の因果関係を認め、長期にわたる本格的な調査を提言した以上、もやはそのような中途半端な姿勢は許されません。
 有明海を含めた環境回復のために水門開放調査に積極的に取り組むべきです。同時に、必要な工事で地域の雇用を守り、調査を通じて、安全に海水を導入する運用体制を見極めることも重要な課題です。諫早湾干拓事業を根本的に見直し、環境と地域社会を再生させる機会として、国と地域が一体となって水門開放調査に取り組むことを強く要望します。

切り離せません。海と干潟も、人と自然の営みも。

●この意見広告に関してのご意見、お問い合わせは下記まで。
 諫早干潟緊急救済本部
  〒854-0034 長崎県諫早市小野町1100-13 TEL
  0957-23-3740 FAX 0957-23-3927
諫早干潟緊急救済東京事務所
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  TEL&FAX 03-3986-6490
  ホームページhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~isahaya/
★この広告は諫早干潟の再生を願う全国の個人、団体からのカンパによって実現しました。
★カンパ振込先:郵便振替01710-1-62594 諫早干潟緊急救済本部


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