諫早湾地域の本来的な防災対策を求める意見広告
諫早干潟緊急救済本部が西日本新聞長崎版に掲載

 諫早干潟緊急救済本部と同東京事務所は、2001年10月31日の西日本新聞長崎版に、諫早湾干拓事業に関する意見広告を掲載しました。広告の内容は以下の通りで、諫早湾地域の本来的な防災対策を施した上で、干潟の再生や有明海の環境回復を求めるものとなっています。この意見広告は全国の湿地保護団体や日本野鳥の会など40余りの団体と多くの個人のカンパにより実現しました。カンパをお寄せいただいた皆さま、ありがとうございました。

本当に必要な防災対策を、一日も早く実施してください。

諫早湾干拓事業の農地造成より、
周辺地域を含めた防災対策を優先してください。
農地造成=内部堤防建設は、
防災効果を今より低下させる危険があります。

●諫早湾干拓事業は、排水不良対策として不完全です。
 諫早湾干拓事業の防災効果に対して、地域の方が大きな期待をされていることを、私たちは十分理解しています。しかし、潮受堤防閉め切り後も、大雨が降るたびに周辺で湛水被害が発生しているように、背後地の排水不良の問題は、諫早湾干拓事業では解決されていません。本来、必要なのは、強制排水のための排水ポンプと、堤防・樋門の補強ではないでしょうか。
 武部農水大臣は、諫早湾干拓事業の見直しを表明しました。私たちは国や関係自治体に対し、この見直しにおいて本当に必要な防災対策を実施するよう求めます。それが、私たちがこれまでも求めてきた、防災と環境保全の両立の道だと考えるからです。

●洪水時の調整池水位は、プラス3.2mまで上昇します。
 調整池の本来の機能は、洪水の際に7200万m3もの大量の水を蓄えることです。このため、洪水時の調整池水位は、最高で標高プラス3.2mまで上昇します。一方で農水省は、「調整池水位が標高マイナス0.5mまで上昇したときには、後背地に湛水被害が発生します」と述べています。調整池は、洪水調整のために水位が上昇することが宿命ですから、マイナス0.5mで背後地に湛水被害が発生するとすれば、防災対策として大きな欠陥を抱えていることになります。
 背後地の生命・財産を守るためには、調整池水位が上昇しても、安全に排水できるポンプ・堤防・樋門の設備が、絶対に不可欠なのです。


洪水時の調整池水位(=3.2m)は、
かつての大潮満潮位(=2.5m)よりさらに高くなります。

●内部堤防を建設すると防災効果はさらに低下します。
 特に注意すべきことは、現時点では、未完成の農地部分が遊水池のはたらきをしているために、調整池容量が計画より大きくなっていることです。背後地の排水対策が不十分なまま、内部堤防を建設すれば、調整池の容量が大幅に減少し、洪水時の水位上昇は、現在よりも5割程度高くなるとの試算があります。
 排水ポンプ・既存堤防・樋門の整備を怠ったまま内部堤防を建設することは、背後地の湛水被害の危険性を高めることに他なりません。


意見広告内部堤防ができると、調整池の容量が大幅に減少し、
防災効果が低下します。

●必要な排水対策を講じれば、水門開放調査も安全に実施できます。
 いわゆるノリ第三者委員会は、失われた諫早湾の干潟の機能を検証するために、潮受堤防の排水門を開放し、できるだけ大量の海水を導入して干潟を再生させる調査を準備しています。必要な排水不良対策が講じられていれば、調整池の水位をマイナス1mに固定する必要はなく、大規模に干潟を再生させることが可能です。
 海水導入による樋門周辺のガタ土の堆積も心配されていますが、同じ有明海に面する佐賀県では、行政が重機でガタ土を除去しています。地元の方の負担にならないガタ土対策は、行政の工夫次第で可能です。そのためにも、老朽化した樋門を改修・整備することこそが急務です。
 これらの防災対策は、開門調査の有無に関わりなく緊急に行う必要があり、それを行うことが、十分な開門調査をも可能にし、有明海全体の環境回復への重要な第一歩となるのです。

本来必要な排水ポンプ・堤防・排水樋門を整備すれば、
海水導入=干潟再生に問題はありません。
地域の生命・財産が守られた上で、諫早湾に豊かな干潟が回復し、
有明海が宝の海として再生することが私たちの願いです。

●この意見広告は、右の団体を始め、ご賛同いただいた全国の多くの皆さまからのカンパによって実現しました。

有明海漁民・市民ネットワーク/日本湿地ネットワーク/世界自然保護基金ジャパン/日本野鳥の会/日本自然保護協会/PRO NATURA/諫早湾自然の権利訴訟原告団・弁護団/諫早干潟そうじの会/和白干潟を守る会/曽根干潟を守る会/久留米の自然を守る会/泡瀬の干潟で遊ぶ会/パンダクラブ徳島/とくしま自然観察の会/よかとネットワーク−岡崎−/行徳野鳥観察舎友の会/尾瀬の自然を守る山ゆりの会/がんばれ動物クラブ/蒲生を守る会/日米アースアクセス委員会/日本野鳥の会長崎県支部/日本野鳥の会佐賀県支部/日本野鳥の会福岡支部/日本野鳥の会筑後支部/日本野鳥の会北九州支部/日本野鳥の会熊本県支部/日本野鳥の会香川県支部/日本野鳥の会徳島県支部/日本野鳥の会兵庫県支部/日本野鳥の会三重県支部/日本野鳥の会奈良支部/日本野鳥の会南富士支部/日本野鳥の会奥多摩支部/日本野鳥の会埼玉県支部/日本野鳥の会群馬県支部/日本野鳥の会福島支部/日本野鳥の会宮城県支部/日本野鳥の会函館支部/日本野鳥の会道南檜山支部(以上順不同)
●広告デザイン協力:(株)CYA


●この意見広告に関してのご意見、お問い合わせは下記まで。

諫早干潟緊急救済本部
 〒854-0034 長崎県諫早市小野町1100-13
 TEL 0957-23-3740 FAX 0957-23-3927

諫早干潟緊急救済東京事務所
 〒171-0032 東京都豊島区雑司が谷3-7-3ベルビュー目白701
 TEL&FAX 03-3986-6490

カンパ振込先:郵便振替 01710-1-62594 諫早干潟緊急救済本部
ホームページ http://www2s.biglobe.ne.jp/~isahaya/


TOP PAGE | INFORMATION | REPORT | LIBRARY | LINK