自然保護6団体が早期の開門調査を要望
農水大臣とノリ第三者委員会に要望書を提出

 5月14日、諫早干潟緊急救済東京事務所をはじめとするNGO 6団体は、最近のノリ不作に代表される有明海周辺の漁業不振、環境悪化の対策として、諫早湾干拓事業の見直しと諫早湾干潟の再生が不可欠であるとの立場から、農林水産大臣及び、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会委員長に対し、潮受け堤防の排水門を開放した調査を早急に行うこと等を求める以下の要望書を提出しました。


水産庁研究指導課の担当官に要望書を提出(5月14日)

2001年5月14日

農林水産大臣  武部 勤 殿
有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会委員長 清水 誠 殿

諫早湾の潮受け堤防排水門を開門した調査に関する要望書

諫早干潟緊急救済本部       代 表 山下八千代
諫早干潟緊急救済東京事務所    代 表 矢嶋 悟 
日本湿地ネットワーク       代 表 辻 淳夫 
財団法人日本野鳥の会       会 長 小杉 隆 
財団法人世界自然保護基金ジャパン 会 長 大内 照之
財団法人日本自然保護協会     理事長 田畑 貞寿


 拝啓 初夏の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

 さて、農林水産省ならびに「有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会」におかれましては、今般の深刻な有明海ノリ不作等に対して、原因究明並びに対策を検討されていることに対し、敬意を表します。貴委員会はこれまでにない高い公開性と、広く国民からの意見に耳を傾ける姿勢を確保されていることを、私たちは高く評価しております。これまで4回にわたり開かれた貴委員会において、今日の現状を「有明海異変」と認識され、異変に至る原因仮説を整理されました。そして諫早湾干拓問題への対応について、干潟の消失による影響とその機能回復の評価などを目的とした数年間にわたる連続的な開門調査の必要があることを共通認識とされました。私たちはこれらを、有明海の回復と諫早湾の再生につながるものとして強く注目しております。

 しかし、第4回の議論を終えて、特に諫早湾排水門の開門調査について大きな疑問が生じてきました。これについて以下、意見を述べ今後の取組に取り入れていただきたくお願いするものです。

敬具

1. 諫早湾排水門の長期開放調査をできる限り早急に実施すること

 貴委員会及び農水省が、有明海周辺の漁業者が極めて深刻な漁業不振に直面しており、緊急の対策を要していることを認識されていないことは大変残念です。このことは、漁連関係の委員が繰り返し貴委員会の中で主張しており、また、第2回委員会で報告された「各県漁業者への聞き取り調査結果」でも明確に示されていることです。

 対策の緊急性を考えたとき、3月27日付「委員長まとめ」にもあるように、「原因が科学的に 100%解明されるまで待つのではなく」、予防原則に照らした対策の提言が早急になされるべきです。にもかかわらず、事実上、一年以上も現状を放置する形の結論となっていることは甚だ遺憾です。

 3月27日付「有明海異変の原因解明と有明海再生に向けた調査・研究についての提言」においては、有明海の物質収支のバランスが崩れた原因を「底質悪化や干潟消滅による底生生物の減少」とし、諫早湾干拓事業による干潟の消失を大きな要因として挙げています。この意味で、諫早湾の水門を開放しての調査は、干潟の再生による底生生物の増加など、原因仮説の直接的な検証方法として、私たちも大きな期待を寄せているところです。

 既に一部の委員からは、早期に開門調査をすることが強く提案されております。開門することにより諫早湾内の潮流速が回復することはシミュレーションの結果からも明らかになっており、これによる環境改善の効果が期待できることから、開門調査が一日も早く行われるよう、要望します。


2. 諫早湾干拓事業の中央干拓地西工区工事を凍結すること

 原因仮説の検証のための諫早湾干潟の機能回復調査に欠かせない論点として、諫早湾干拓事業の中央干拓地西工区の工事中断問題があります。

 水門開放調査では、干潟再生の効果を検証することが必要ですが、西工区の工事が進めば、干潟の再生に支障を来すことは明らかです。貴委員会は、前面堤防工事については、調査に影響を及ぼすことを理由に凍結を提言しているのですから、同じく調査目的に悪影響を与える西工区整備工事の継続を認めることは、著しく論理の整合性を欠くものです。

 開門調査における干潟再生に支障を来す西工区の工事は凍結するよう、委員会として提言することを要望します。


3. 開門調査に向けた準備課題に早急に取り組み、速やかに対策を実施すること

 開門調査を行うにあたり考慮すべきこととして、3月27日付「諫早湾の排水門を開門した調査に関わる見解について」において、開門調査の準備過程として列挙された諸課題は、実際の対応に一定の時間を要するものです。可及的速やかに開門調査に着手し、有明海再生への提言を行うためにも、これらの課題の解決と開門準備作業に、今直ちに着手すべきです。

 開門して調査を行うことが既に確定している以上、調査方法の検討と同時並行で、開門調査のための課題にできる限り早急に着手していただくことを要望します。

以上


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