日本湿地ネットワーク
代表 辻 淳夫
自民党が打ち出した公共事業の見直しは、中海干拓事業の中止や、吉野川可動堰の「白紙」化など、大きな意味のあるものもあるが、その多くは既に事実上停止している事業であり、真の見直しとは到底言えない。
公共事業が無用な財政負担だけでなく、巨大な自然破壊をともなったことへの反省が無く、大きな環境破壊を進行させつつある諫早湾干拓や、その恐れが強い川辺川ダム、東京湾三番瀬埋立事業などを対象にしないのは問題である。
真っ先に見直すべきは、日本の理不尽な公共事業の象徴と言うべき諫早湾の干拓事業である。事業は進行中だが、優良農地の造成と防災という目的の破綻は既に明らかであり、一刻も早く事業を中止し、水門を開放して、湾内の汚れきった水質の改善と干潟の復元を図るべきであり、その全体の事業計画の再評価と現実的な代替案の検討を進めるべきである。
1997年4月14日の水門締め切りは、世界の心ある人々の魂を凍らせた「ホロコースト(生物皆殺し)」であり、その衝撃と深い傷跡は今も癒されることなく、生々しい。そして、それから3年、締め切られた調整池の水質は悪化の一途をたどり、潮受け堤防外の諫早湾の漁場ではタイラギやアサリの全滅など、深刻な漁業被害が広がり、ついには大浦や島原の漁民自らが、水門開放と干拓事業の中止を訴える、直接行動に立ち上がっている。
豊かな有明海と、その豊穣ないのちを生み出す子宮としての諫早湾に魅せられ、ムツゴロウをはじめ幾億のいのちの代弁者として、30年にわたる活動を続けてきた、諫早干潟緊急救済本部と日本湿地ネットワークの代表であった山下弘文氏は、水門の開放が近いことを予告しながら、7月21日に急逝された。
私たち、日本湿地ネットワークは、山下さんの遺志をついで、賛同する団体個人とともに、以下を要請します。
1.国営諫早湾干拓事業を、緊急に見直す公共事業の対象にすること。
2.諫早湾潮受け堤防の水門を開放し、事業の見直しによる代替策の検討がすむまで、事業を中止または凍結すること。
以上
「諫早湾干拓事業の見直しを求める緊急要請」に賛同します。
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