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諫早干潟緊急救済本部が早期開門を求める要望書を提出

 諫早干潟緊急救済本部と同東京事務所は、2010年5月10日、諫早湾の早期開門を求める要望書を赤松農水大臣に対して提出しました。


2010年5年10日

農林水産大臣 赤松広隆 殿

諫早湾の早期開門を求める要望書

諫早干潟緊急救済本部代表:山下八千代
諫早干潟緊急救済東京事務所代表:陣内 隆之

 諫早湾干拓事業の開門調査について、与党の検討委員会が中長期にわたる開門調査の実施を適当とする報告を出しましたが、5月中にも大臣の最終判断があると聞いています。新政権によって開門調査実施が提言されたことを、私たちは大変心強く思います。大臣の最終判断に期待が高まりますが、最終判断にあたっては、ぜひ早期の開門の実施をお願い申し上げます。

 大臣には、現地にも足を運んでいただき、意見交換会も行っていただきましたが、その後の大臣会見では、開門を主張している人も徹底したアセスメントを求めているとコメントされ、私たち一般の市民や漁民の声が届いていないのではと危惧しています。諫早湾では、毎年夏になると赤潮や貧酸素が発生し、魚介類が死滅してしまう状況が続いており、調整池には有毒なアオコが発生し、健康や安全面でも懸念すべき事態が続いています。諫早湾の環境改善は一刻の猶予もなく、一日も早い開門が切望されます。

 開門に当たっては、防災対策や農業用水の確保、漁業への影響、塩害対策などが課題とされていますが、短期開門調査と同じ制限的開門から始めれば、早期開門は可能です。2002年の短期開門調査では、開門の決定後わずか数日の準備で実施できた実績があります。事前準備にはこれに加えて簡易ため池を設置すれば十分であり、これも中海干拓見直しで実証済みです。また「開門したら海が汚れる」という懸念は大きな間違いであり、被害は今起きているのです。現在も調整池から有明海に大量の汚濁水が排出され、海を汚しているのです。しかし、調整池に海水が導入されれば、新たなアオコの発生はなくなり、調整池内の慢性的な赤潮は解消されます。開門幅を徐々に大きくして、諫早湾内に速い潮流が回復すれば、湾内外の赤潮や貧酸素が改善され、ノリ養殖や漁船漁業にも効果が期待できます。常時開門に向けた代替農業用水の確保や排水ポンプの増設などの施策は開門しようとしまいと無関係に必要であり、中間的開門によるアセスメントを行いながら対策を進めていくことが現実的です。塩害についても、現在は内部堤防と潮遊池があり、有明海沿岸の他地域と区別する理由がありません。必要な検討は中長期開門調査検討会議などで実施済みであり、開門の是非を判断するのにアセスメントの終了を前提にする必要は全くありません。

 このような主張は、既に弁護団などから具体的に提案されてきたところですが、一顧だにされていないことは遺憾です。意見交換会で予定された発言者は自治体首長や団体関係者に限られ、実際に海で働く漁業者の声を届ける場が不十分でした。特に、長崎県諫早市の意見交換会では、瑞穂漁協の石田組合長以外はすべて開門反対派であり、その主張は明らかな事実誤認に基づくものばかりで、私たちとしては大いに不満が残りました。今後は、全ての利害関係人の代表で構成する開門協議会を国主導で設置するなどして、開門に向けての課題や開門後の問題を冷静かつ科学的に話し合っていくことが必要です。


 また、開門調査実施の方向が示されるのであれば、開門を不服とした福岡高裁への国の控訴は取り下げられなければなりません。そうでなければ、国との対立関係が続くことになり、国が率先して問題解決に当たるという判断と矛盾するからです。

 さらに、開門の期間は、干潟の十分な再生や佐賀地裁判決に照らして「常時開門で5年」は必要です。現在、事実上休眠状態にある有明海・八代海総合調査評価委員会を活性化して、データに基づく評価委での科学的な検討が期待されます。

 今年10月には、生物多様性条約の締約国会議が名古屋で開催されます。有明海の干潟・浅海域の生物多様性を回復することは国際的にも重要な取り組みであり、議長国である日本政府の姿勢は世界から大きな注目を集めます。早期開門を実現し、世界にアピールすることこそが求められています。

 大臣の最終判断にあたっては、これらを考慮し、一日も早い開門の実現を表明していただきたくお願い申し上げます。