干陸地の現状 98.8.31現在

高田 直俊 (社)大阪自然環境保全協会/大阪市立大学工学部土木工学科

 二反田川河口で南部堤防(内部堤防)の試験工事が始められている。堤防の高さは約3メートル、天端幅は約8メートル、堤防中央は遮水のためか、ガタ土をセメント添加処理して入れている。すでにかなり沈下し、両翼の押さえ盛土の天端が逆勾配になっている。干潟面には幅50センチメートル、深さ50センチメートルの排水溝が5メートル間隔に全面に掘られている。乾燥した地盤面の30センチメートル下は軟らかく、太さ5センチメートルの棒が片手で押し込める。

 表面が乾燥した現干拓堤防の近くは、何とか土が盛れるが、水域に近づくと表層を突き破って盛土が沈下するので、何カ月もかけて少しづつ盛るか、高価なセメント混合でガタ土を固めるか、潮受堤のように置換砂杭を打つかしないと堤防は造れない。水面は現干拓堤防から約2キロメートル沖にある。前面堤防は水域に作るので、工事はさらに困難を伴い、高価なものになる。作った堤防は沈下する。沈下が落ち着くのに長時間を要す。これを嫌えば高価な工法を採ることになり、工事費を押し上げる。現干拓堤防も大きな不同沈下が原因したためと思うが、その天端はおよそ直線には作られていない。

 有明海沿岸の沖積粘土は地盤工学的には日本最悪の土、世界最悪の土のひとつといってよく、これに異議を唱える地盤技術屋はいないはず。軟らかい粘土はどこにでもある。例えば、車で軟らかい地盤を通ると次第に土が軟らかくなって車輪がにえ込んで通れなくなる。他の軟らかい地盤は10台目でにえ込むとすれば、有明粘土は2〜3回でにえ込む、で例えられる。つまり変形に対しする強度低下が極めて大きく、破壊に対する粘りがなく、盛土が地盤を突き破って破壊し易いのである。

 干潟面は、シチメンソウが覆いその間にヨシが点々と生えだしている。2、3年でヨシに覆われそうである。少しでも湿ったところにはカニの孔が点々と開き、水際には多くのトビハゼが健在である。


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