全長約60センチ、有明海とくに諫早湾で11月下旬から約2OO羽が越冬していた。北九州の曽根海岸や島根県にも現われるが、地域や羽数が限定され、環境庁編「絶滅のおそれのある野生生物」の危急種にあげられており、保護対策が急がれる。警戒心が強く、観察には離れたところから望遠鏡や双眼鏡が必要だ。紅葉のシチメンソウが終わった後の地味な干潟には、くちばしが赤く白や緑色光沢の鮮やかな姿はよく目立つ。大きさは東京では人気者のカルガモくらい。越冬地が東京であれば一夜にして有名になれる容姿を備えているのに惜しまれる存在だ。狩猟期間に誤ってカメラの放列ならぬ銃口を、ハンターから向けられた場面を目撃したこともある。

筑紫鴨と記すところから、ずっと以前は九州の各地に生息していたのかもしれない。今冬は、曽根海岸で越冬するツクシガモが増えている、とのこと。諫早湾を追われたカモが安全や餌場確保の、緊急避難の一時的な集合場所ではないかとも考えられる。かつて、東京湾や瀬戸内海の干潟や海岸線が次々と埋め立てられた際にも各地でこのような現象が起こり、最終的には減少や消滅へ向かっていった。干潟の餌の量が一定のところに鳥たちが集中するからであろう。

今月3日に、昨シーズン羽を休めていた場所、小野海岸そして小江の内部堤防を見た後、海を切り裂くように造られた閉め切り堤防付近にも車を進めたが、懐かしいのは寄せては返す波と潮の香ばかりで、目あてのツクシガモは一羽も確認できなかった。

 *イサハヤ干潟通信第5号より転載*


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