漁民ネットと農水省の第2回直接交渉(2001年11月9日)

 有明海漁民・市民ネットワークは11月9日に東京で農水省との会合を開き、諫早湾干拓事業の縮小見直し案について説明を受けました。また下記のような質問項目に対する回答も求め、10月23日に行った交渉に続く、第2回目の直接交渉となりました。

 会合の中から、冒頭の抗議文や要請文の朗読と、農水省からの縮小見直し案の説明を除き、質疑応答の部分について、以下の5パートのデータ(RealPlayer)に分けて収録しましたのでご覧ください。


11/9話し合いにおいて提出した質問項目

<縮小案問題>

1.見直し案は東工区の造成断念を最大の変更点としているが、それはこれまでの計画のどういった点が問題だと認識した結果の変更なのか、またこの変更によってその問題点のいかなる改善効果を期待しているのか。公水法13条-2には「都道府県知事正当ノ事由アリト認ムルトキハ免許ヲ為シタル埋立ニ関シ埋立区域ノ縮少、埋立地ノ用途若ハ設計ノ概要ノ変更又ハ前条ノ期間ノ伸長ヲ許可スルコトヲ得」とあり、「正当ノ事由」を事業計画変更の条件としているが、今次見直しの正当な事由は何か。

2.縮小案で干拓地面積が半減すると、作物生産効果と国土造成効果も半減し、費用対効果が1.00を割り込むのは確実であるが、その場合は土地改良法違反の事業となるのではないか。

3.再評価第三者委員会の「環境への真摯かつ一層の配慮を条件に事業を見直されたい」という答申にある「環境」とは、調整池内の淡水性生態系を指すのか、それとも干潟生態系や有明海生態系を指すのか。今回の縮小案における「環境への一層の配慮」内容は、再評価委答申の曲解ではないのか。

<前提となる認識>

4.本事業の本格着工の前後及び潮受け堤防締切りの前後で漁獲高に著しい変化はない、とした中村敦夫議員への答弁書(2000/8/8)内容に今でも誤りはないと考えるか。これは10/26の漁民証言と大きく食い違うが、どちらが真実か。また「有明海の現状はおおむねアセスの予想通り」というレビューは、漁業の実態調査が全くなされないまま、たとえば漁船漁業では単に「潮流・海底地形・波浪・底質」項目のレビュー概要が記述されているのみであるが、これは結論的には「操業への影響はないものと考えられる」としたアセスが正しかったという認識なのか、それとも誤っていた可能性を含みとして残した認識なのか。

<因果関係>

5.諫早湾湾口部の採砂地はかつてタイラギなどの好漁場だったが、今は潮受堤防工事用の砂の採取のため広範囲に幾多の溝となって残り、底生生物が激減して漁場としても全く使えなくなっている。これは諫干が直接漁場環境を破壊した一例であると認めるか。

6.潮受堤防建設時、ドレーンパイプの埋め込み工事や工事船が湾中央を航行したために、巻き上げられた底泥が周辺漁場のタイラギを覆って死滅させたり、工事着工後島原半島沖の湾外にもヘドロが流出してきた等の漁民の証言があるが、これらは諫干工事と漁場荒廃の因果関係を示す例であると認めるか。

7.諫早干潟の消滅により、調整池内外の水質・底質が悪化したことを認めるか。否定するならその根拠を示されたい。不明とするなら、今後いかなる調査で確認するかを明らかにされたい。

8.潮受堤防の存在によって潮流・潮汐が弱まったことを認めるか。また潮流・潮汐の鈍化が海の攪拌力を弱め、有明海異変に影響していることを認めるか。

9.総じて有明海異変と諫干の因果関係の有無は、今後どういう調査データで確認できると考えているかを明確に示されたい。

<10/26積み残し問題>

10. 10/26答弁書1では、諌早現行方式が既設堤防嵩上げやポンプ増強方式と比較して「防災機能の点で有効かつ効率的である」としているが、その判断の根拠となったデータを示しつつ論証されたい。

11. 10/26答弁書2では、潮受け堤防の撤去を考えていないとのことだが、代替法のある潮受け堤防の防災機能と代替法のない有明海再生のいずれが重要と考えるか。

12. 10/26答弁書3では、有明海再生よりも農地造成を選択した理由を問うたが、大臣談話に従って検討中という答弁だった。見直し案が出たこの時点で改めて問いたい。また公水法42条の解釈はいかがか。

13. 10/26答弁書4では、原因は解明中との回答だった。原因が諫干という判断になった場合の漁業者への補償はどうするのか。また今後とも漁民との協議は続行すると確認できるか。

<再見直しの視点>

14.有明海再生と背後地排水の両立は、いかなる方法で可能と考えるか。農村振興局・水産庁のそれぞれの見解を示されたい。

15.事業の適否は、防災上の効果・効率性はもとより、破壊されたり影響を被る干潟環境や漁場環境をも同時に考慮して、総合的に判断すべきものと考えるが、いかがか。

16.事業を中止すると干拓事務所がなくなり、潮受堤防の管理が不可能になるという再評価第三者委員会における九州農政局の発言は真実なのか。


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