諫早湾自然の権利訴訟 1999年10月23日現地検証指示説明書

(14)小野島海岸
原告側
指示説明
1 この地点から諫早湾にむかってかつては広大な干潟が広がっていた。多くの底地性生物が生息し、ムツゴロウ、ハゼ類、シオマネキ、アリアケガニなどのカニ類が高密度で生息し、干潮時には地面が動くと見まがうほどに干潟をにぎわせていた。それらの生物を求めて鳥たちも飛来してきた。この地は野鳥観察のメッカであり多くの研究者、観察家が訪れていた。
 締切後、この地点は干上がり、カニ類などの多くの底地性生物の死骸が散乱した。現在では雑草で覆われている。

2 小野島海岸から見える干拓地が既存堤防外側に比較して明らかに低いことが分かる。
 潮受堤防建設後であるにもかかわらず小野島干拓地は排水不良状態を解消するために、クリークが大規模に整備された。クリークは排水路であると共に調整池の機能も果たすためにもうけられたものである。また、この干拓地では新たに排水ポンプが建設されようとしている。本来、本件調整池が建設されることにより排水不良は改善されるはずであったが、結局は改善をみず、新たな排水対策が必要となったのである。

3 昨年7月19日の降雨で溢水した。従来、潮受堤防完成後はそのような溢水は起こらなくなるとされていた。
被告側
指示説明
 既存堤防の背後地農地は干拓によって創り出された低平地であり、諫早湾の潮位の変動が大きいため、海面より陸地が低くなる時間が長く、この間の自然排水は困難であったが、調整池の管理水位を小潮の平均干潮位と同程度の標高マイナス1.0メートルに保つことによって、背後地農地の自然排水が困難となる時間は大幅に短縮され、排水不良は改善されている。
 新たに建設されようとしている背後地の排水施設は、背後地の土地利用の状況の変化に鑑みて、排水効果を補充するものである。


小野島海岸の既存堤防。左が海側、右が小野島干拓地


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