国営諫早湾干拓事業に関する再質問主意書と回答

四 農業関連問題

1.
 戦後の干拓事業にかかる干拓地(場所、完成時期、面積)をすべて挙げよ。また、それぞれについて、現況(酪農地、水田、畑作地、放棄地、転用地のそれぞれの面積)を明らかにされたい。

(答) 戦後の干拓事業の場所、完成時期、面積は別表2のとおりである。なお、現在の土地利用状況については把握していない。

2. この10年間で農地から宅地に転用された面積を、全国、長崎県、関係の市町につきそれぞれ明かにされたい。(10年間の資料がなければ、異なる期間のものでもよい。)

(答) 昭和61年から平成7年までの10年間に農地から農地以外に転用された面積は、全国で約31万2千2百ヘクタール、長崎県で約4160ヘクタール、関係市町である諌早市、守山町、高来町、吾妻町及び愛野町で約410ヘクタールである。

3. 農水省は、将来の食糧危機に備えて本件干拓事業が必要であるというが、他方で2のように、自ら巨大な農地を消滅させている。この2つの矛盾する政策について、本件事業の根拠法である土地改良法に基づく同法施行令2条1号では、事業の必要性につき、「当該土地改良事業の施行に係る地域の土壌、水利、その他の自然的、社会的及び経済的環境上、農業の生産性の向上、農業生産性の増大、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資するためにその事業を必要とする」ことがその要件となっているが、近隣の優良農地の宅地への転用を認めず、また、現在の放棄地(干拓地の相当面積が放棄されている。)を有効に利用すれば、本件事業による農地造成はまったく必要ではないのではないか。にもかかわらず、本件事業は右要件を充足しているとするなら、その積極的理由を明らかにされたい。

(答) 国土が狭小で、1人当たり可住地面積が小さいといった土地条件の下で高密度な社会経済活動が営まれている我が国においては、農地の確保という要請と公共用地や住宅地などの非農業的土地利用の要請との調整を図り、計画的な土地利用を図る必要があり、社会経済上必要な農地の転用を認めているところである。
 一方、耕作放棄は、高齢化などが進展する中で、中山間地の傾斜地など機械の利用が困難な農地等において発生しているものであり、これらは、自然的、社会的条件からみて、農業上の効率的な利用が見込めない土地に多く存在している。このような中で、我が国の農地は、昭和36年の約609万ヘクタールをピークに年々減少し、平成8年には約500万ヘクタールとなり、現在も毎年4万ヘクタールから5万ヘクタールの農地が減少しており、我が国の食料の安定的供給及び地域農業の振興を図るためには、生産性の高い農業経営を実現し得る優良な農地を確保することが必要である。
 国営諫早湾干拓事業は、地形的に平坦な農地に乏しい長崎県において、長崎県や関係市町等地元の強い要望に沿って、かんがい用水が確保された大規模で平坦な優良農地を造成し、意欲ある農家による生産性の高い野菜、畜産等の農業を実現することを目的に実施しているものであり、土地改良法施行令(昭和24年政令第295号)第2条第1号の要件を充足したものである。

4. 前記施行令2条4号では、受益者農家の負担能力内の要件として、投資額と収益額を比較して十分に農業経営が成り立つことを挙げている。そこで、現時点の本件干拓地における各営農モデル(土地購入費、年間償還額、経費―土地改良費、設備投資額及び年間償還額、粗収入)を明かにされたい。この点については、中海干拓や羊角湾干拓地に関する営農モデルなどを参考にされたい。
以上の結果、現在も将来とも収支が合わないということが明らかな場合には、事業自体の続行が違法になるのではないか。その場合、事業をただちに中止すべきではないか。

(答) 国営諫早湾干拓事業の事業計画における営農計画について、平成7年度の単価等に基づく試算による各営農類型ごとの1戸当たりの経営収支は別表3のとおりであり、長崎県の長崎県新農攻プランにおいて目標とする所得が確保できる内容となっている。

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