大木浩環境庁長官宛の要望書

1997年12月2日

環境庁長官  大木 浩 様

「シギ・チドリ類渡来湿地目録」に記載された
国際的に重要な渡来地の保全についての要望

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 日ごろより私どもの活動につきましてご理解・ご支援をいただき、まことにありがとうございます。

 さて、貴庁は先頃日本全国の国際的に重要なシギ・チドリの渡来湿地を記載した「シギ・チドリ類渡来湿地目録」を発表されました。この目録は、ラムサール条約の第6回締約国会議で日本政府が豪政府等と共同提案し、採択された勧告6.4「東アジア・オーストラリア地域の渡りのルート沿いの登録湿地のネットワーク構築に関する勧告(ブリスベン・イニシアチブ)」の趣旨を着実に実施されているものと高く評価されるべきです。またこうした取り組みは、かつて締結され、現在も機能している日米、日豪、日露、日中の二カ国間の渡り鳥条約・協定を的確に履行しているものであり、私どもではこのたびの発表を大いに歓迎し、湿地の将来にわたる保全に死するものであると考え、深い敬意をいだくものです。

 しかし同時に、これらの国際的に重要な渡来湿地が開発のために消滅しようとしている厳然たる事実があります。たとえば、78個所の重要とされた渡来湿地の中で、最大の個体数が記録された長崎県の諫早湾では、農林水産省による1997年4月の国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防の締め切りにより、すでにこの秋の渡りの時期のシギ・チドリ類の渡来数が約半分に激減いたしました。このままでは渡り鳥が採食し休息する湿地は消滅する一方です。また、二番目に渡来数の多かった愛知県藤前干潟では、名古屋市の廃棄物最終処分場設置事業(ごみ埋め立て)により採食地の中央部を消滅させてしまうことになる計画が、今なお進行中です。これらのほかにも、特に重要とされた12の渡来地域の生態系を失わせるような開発計画が十分な再調査など行われることなく進行中です。こうした事実からは、渡来地目録作成・発表の趣旨が現実には残念ながら軽視されていると考えざるを得ません。

 このため、私どもでは、これらの国際的に重要な渡来地を保全し、二カ国間渡り鳥条約・協定とラムサール条約とを遵守するため、湿地開発事業の関係者が既存の開発計画の策定にいたった調査を再度、公開・公正なやり方で行うこと、計画の代替案を検討するための合意形成の場を設けるよう努めることなど、貴庁が当該事業者に対して要請されるよう強く要望いたしたいと思います。

 伝えられるところでは、「シギ・チドリ類重要渡来地域行政連絡会議」が設けられ会合も開催されたとうかがっております。私どもでも微力ながら当該自治体に目録記載の渡来湿地の保全をさらに働きかけていこうと考えております。

 なお、今回の「シギ・チドリ類渡来湿地目録」の発表につきましては、二カ国条約・協定の締結告に深く関わるため、私どもより目録の概略と開発計画の現状についてお伝えする文書をロシア、アメリカ合衆国、オーストラリアの各国の担当大臣に送付いたしました。もちろん、こうした文書の送付については、当該国内の私どものような民間団体(NGO)と密接に連絡を取り合いながら行っていることも併せてお知らせいたします。

 以上の件につきまして、何卒ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。

敬具


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