議員の会が再質問主意書を提出

諫早湾を考える議員の会では、本年6月18日付で政府に提出した「国営諫早湾干拓事業に関する質問主意書」に続いて、再度、質問主意書を提出した。それに先立ち、去る11月26日には、安東毅 九州大学名誉教授(水質)、高田直俊 大阪市立大学教授(土木工学)、そして、保母武彦 島根大学教授(経済学)を招いての意見交換を行った。そして、6月の主意書提出以降も断続的に行なってきた資料請求やヒアリングを通じて入手してきた情報をもとに、排水門締切後約8ヶ月の間に現地の諫早で発生した湛水被害や水質問題等を踏まえ、質問主意書を臨時国会最終日の12月12日に提出した。

質問項目は、生態系と環境アセスメント,水質,防災,農業,財政,国際条約,干潟の賢明な利用―と、大きく7つに分けられている。今まで、農水省が干拓事業推進の根拠にしている様々な調査や情報が、いったい何時、どこで、どのような方法で行なわれたのか、明らかにされていない場合が多く、質問の全般にわたってその点を明らかにするよう求めている。

生態系・環境アセスでは、長崎南部総合開発計画の際のアセスメント評価と本事業の評価の違いや、渡り鳥やその他生態系に対する調査方法を、水質に関しては、現在のCOD値の安定が単なる季節的要因(水温低下や農閑期)ではないかという疑問、潮受堤防外側の漁場や養殖場の一部での漁獲、生産高の低下と調整池の排水の因果関係などを聞いた。 防災では、「自然の権利裁判」公判で干拓事務所長が、潮受堤防が普通程度の雨に対する自然排水目的で、大雨時の低地の湛水には効果がない、と証言したこと(干潟通信第3号でもお伝えした)に対する農水省の見解や、排水機場のポンプの排水能力について質した。(既に、金沢大学の宮江伸一教授や上記、高田教授が能力不足を予測している。)

農業、財政に関しては、戦後の干拓地の面積や現在の状況、土地改良法の問題、本事業で失われる干潟の浄化作用、漁業資源の価値が全く考慮されていないことの論拠。国際法に関しては、日本政府がラムサール事務局に提出した報告の根拠、ラムサール条約や生物多様性条約などに関連する環境ガイドラインを考慮していない政府の国際的責任を改めて問うている。

最後に、再三尋ねてきたことではあるが、干潟の賢明な利用という観点から、事業内容の変更があり得るのかと聞いた。農水省の公共事業には、干潟の再生事業というのがある。それは、干潟の浄化作用を十分認識しているからであろう。諌早は、干拓されてから再び干潟に戻すなどというような無駄なことが起こらぬよう、農水省の皆さんの「賢明な」判断に期待したい。

(東京事務所 原田)*イサハヤ干潟通信第4号から転載*


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