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公調委裁定に対する
有明海漁民・市民ネットワークの抗議声明

 諫早湾干拓事業による漁業被害を訴えた17人の漁民の申請をすべて棄却した、2005年8月30日の公害等調整委員会の原因裁定結果に対し、有明海漁民・市民ネットワークは以下の抗議声明を発表しました。


公調委の恣意的裁定に対する抗議声明

2005年9月5日
有明海漁民・市民ネットワーク

 公害等調整委員会は去る8月30日、諫早湾干拓工事と有明海漁業被害に係わる原因裁定で、非情にも私たちの申請を棄却した。ここに私たちは、公調委が行った因果関係の検討内容がいかに科学性や論理性を失ったものであるか、又いかに恣意的な基準によって判定した結果であったかを明らかにして、断固たる抗議の意を表明するものである。

1.被害認定拒否の暴論
 公調委は申請者17名中15名に漁業被害を認定したものの、残る2人の熊本県のタイラギ漁民の被害を認定しなかった。その却下理由は、あまりにも乱暴なものだった。
 すなわち公調委は、もともと熊本県全体のタイラギ漁獲量は毎年数十トン程度であり千トン単位の他県よりも極端に少なかったので、それが締め切り後ゼロになったとしても被害とは認定できないという驚くべき屁理屈をもって認定を拒否したのである。たしかに熊本県内のタイラギ資源量はもともと他県より少なく、したがってタイラギ漁民の数も少なかったので他県の市場に出荷していた事情も加わって県全体の漁獲統計額が少ないのは事実である。しかし、だからと言って個々の漁民にとっては、県全体の統計は関係がないのである。タイラギで全生活を支えてきた漁民個人の漁獲がゼロになることは、彼らにとっては死活問題なのであって、これが被害として認識できないというのは、公調委の判断がいかに常識外れなものであるかを示している。
 却下の理由に合理的根拠がない以上、熊本の2名も被害が認定され、本来であれば17名全員の被害が認められて当然だったのである。
 
2.あまりにも突飛な因果関係の判定基準
 しかしそれでも公調委は15名の被害を認めたうえで、諫干締め切り後に有明海で赤潮が増加したという事実関係も認定し、赤潮が増加すれば直接的にノリ被害に結びつき、またプランクトンの沈降堆積によって底質が悪化してクチゾコやタイラギなど魚類や貝類の被害に結びつきうるという被害へ至るメカニズムも認定した。それにもかかわらず、結論としては17名全員の申し立てを棄却したのである。それはなぜか。諫干から漁業被害まで結びつける全体の論理展開の中で、認定されなかった重要な鎖はただ一点である。それは、特に締め切り前の「データ不足や赤潮発生増殖機構に関する科学的知見が不足」していることを表面上の根拠にして、諫干と赤潮を結びつける論点において「高度の蓋然性」を肯定するに至らなかったというのである。ここには重大な問題点が潜んでいる。
 公調委は言葉の上では「因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、事実と結果との間に高度の蓋然性を証明することであり、その判定は通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる」とした最高裁判例を踏まえる立場を表明している。この最高裁の判例に則って、当の公調委自らは平成14年に杉並区不燃ゴミ中継施設健康被害原因裁定申請事件において、住民側の原因裁定申請を一部認める裁定をくだしている。その際の具体的な判断基準(「通常人が疑いを差し挟まない程度の真実性」の存否)は、いわゆる疫学的判定基準と言われるものが使われていた。すなわち(1)事実(施設の稼働開始)と結果(健康被害)の間に、時間的場所的近接性が認められること、(2)事実(施設から排出された何らかの有害化学物質)と結果(健康被害発生)を結ぶメカニズムについての合理的な説明が成立する可能性があること、(3)結果(健康被害)をもたらす他の原因が見いだせないこと、の3点が充足されれば「真実性」があると判定されて最高裁判例の言う「高度の蓋然性」が認められるということになる。既にこの疫学的判定基準に則った多くの判例が各地の裁判所でも出されている。特筆すべきは、この杉並病事件では遂に有害物質が何であるかについては科学的に特定できないままであったにもかかわらず、それでも公調委は疫学的判定基準に忠実に従って申請を認容するという公正な結論を導き出したことである。
 この疫学的判定基準を、今次有明海事件で公調委が認めた事実をつなげて当てはめてみれば、以下のように私たちの申請も容易に認容されていたはずである。すなわち、(1)97年に締め切られた諫干という「事実」と98年から有明海で赤潮の増加・大規模化・長期化したという「結果」(この事実関係は公調委も認めた)の間には、時間的場所的近接性があり、(2)諫干と赤潮を結ぶメカニズムとしては、「成層度の強化論」(この論については公調委も赤潮増加のメカニズム論として成立しうることを認めている)や「海水交換率悪化論」、「諫早湾流入海水減少論」「最大流速出現時刻変化論」など複数の合理的な説明が成立しうるだけでなく、(3)諫干以外に、一般論として赤潮の増加をもたらすと考えられる他の原因(国側が主張した海水温上昇・奥部海域透明度上昇・二枚貝の捕食圧低下による富栄養化・日射量増加・降水量増加)は、公調委もことごとく否定したように、98年からの赤潮増加の理由としては科学的に説明が困難であり、結局のところ諫干以外の他要因は考えられない、ということになるわけである。つまり疫学的判定基準に則っていれば、杉並病同様に今次原因裁定も、諫干と赤潮、したがって漁業被害に至る因果関係は当然にも認定されていたことを意味する。
 しかしそれでも結果的に公調委は、諫干と赤潮を結ぶ因果に「高度の蓋然性をもって認定するには至らない」として諫干から被害に至る論理の一カ所のみを断ち切ったのであるが、その際に公調委が持ち出した唯一の根拠は「赤潮の発生・増殖機構については、なお未解明の部分が残されている」というものだった。赤潮一般の発生増殖機構であれば、確かに科学的知見はなお不十分であり発展途上にあるのは間違いない。しかし本件で問われているのは赤潮論一般ではなく、あくまでも98年から増加している有明海における赤潮の発生増加メカニズムにすぎない。上記(2)に述べたように、ここでは諫干に起因して有明海で赤潮が増加したメカニズムについて合理的説明がつけばそれで足りるのであるし、そのメカニズムが複数考えられるとしても、いずれも諫干に起因したメカニズムである以上、それ以上の詳細な究明は不要である。事実、杉並病問題で公調委は、中継所排気及び周辺大気から検出される有害物質には毒性を持つものが少なくないとして複数の物質を例示しただけであり、このうちどの物質が原因だったかは特定しないまま、したがってその物質がどのようなメカニズムで人体に影響を与えるかの詳細な医学的メカニズムの検討も行えないまま、まさに疫学的観点から判定を下しているのである(この点、疫学調査からチッソの工場排水が原因と分かった後になっても、なお排水中の原因物質の特定や発病に至るメカニズムの解明を求められたことによって原因の認定が遅らされた水俣病問題の経緯とは段違いである)。諫干に起因する複数の赤潮発生メカニズムのどれが、あるいはどれとどれがどの程度の割合で、実際に寄与しているかが不明でも、いずれも諫干に起因するメカニズムが成り立ち得ることが証明できれば上記(2)の要件は充足されるのである。この点は上記杉並病事件の内容からも明らかであろう。
 ところが今次裁定書では、疫学的判定基準に沿えば上述のように結果的に申請を認めざるを得なくなるために、公調委は突如として、赤潮についての一般的な知見がもっと充足しなければ諫干が赤潮増加をもたらしたと「自信をもって」断定できない、という理屈を出してきたのである。こんな言い逃れがまかり通るのであれば、環境や公害問題のあらゆる事件について、因果関係の認定は今後一切不可能になるだろう。科学は日々発展しており、それに終わりはないのであって、その意味ではいつの世の科学も不十分である。ここで公調委が実質的に採用した判定基準は、疫学的判定基準を大きく逸脱しているだけでなく、たとえ完全な自然科学的証明がなされたとしても、悪意ある判定者ならば「将来の科学水準からすればまだ不十分」を根拠にして恣意的判断をくだすことになるだろう。私たちは、このような主観的かつ意図的な判定基準を絶対に認めることはできない。
 先の5/16福岡高裁は「疎明の程度としては、一般の場合に比べて高い、いわゆる証明に近いものが要求される」として、事実上の「自然科学的証明」を要求してきたのであるが、今回の公調委は自然科学的証明よりもさらに高く、誰にも絶対に飛び越えられないハードル(言わば未来の科学水準からする証明)を設定したことになる。それは自然科学者から構成される専門委員会が提出した報告書のシミュレーションや見解を、法律専門家の裁定委員が簡単に否定し去ったという点にも如実に表れている。最高裁判例に違反したこの異常な公調委の姿勢に、私たちは政治的な臭いを感じないではいられない。つまり「結論ありき」だったのではないかとの疑いである。このために裁定書における論理展開は、次項以下に見るようにご都合主義的であって一貫せず、あまりにも乱暴で各所で綻びを露呈している。
 
3.漁民の実感を信用しない公調委
 裁定書における個々の論点の中で、私たち漁民ネットとして看過できないのは、ほとんどすべての有明海の漁業者が実感してきた有明海奥部海域における潮流鈍化を、各種シミュレーションと海上保安庁調査結果の二つのみを根拠に事実として認定しなかった点である。これが最大の足かせとなって、赤潮増加メカニズムの本命と目される「流速鈍化による成層度強化論」の根拠が薄いとされたわけであるが、たとえここで奥部の潮速減少問題を留保したとしても、諫干による成層度強化のメカニズムは他の証拠(有明海奥部でも潮受堤防の有無の違いで最大流速出現時刻に数十分もの狂いが生ずるという農水省シミュレーション結果だけからしても、有明海奥部海域での部分的海水停滞化傾向や流速鈍化が推定できる)からも複数の可能性が認定されてしかるべきだったと言わねばならない。公調委は他の自らに都合の悪い論点では同じシミュレーションの限界を強調して否定してみせながら、私たちの主張を否定する理由としてはこれを採用するという、まさにご都合主義そのものの論理展開を行ったのである。また海上保安庁の潮流調査は、締め切り後の調査時点における大きな降雨量のために密度流が強まり(この影響で流速は速くなる)、本来締め切り後は遅くなっているはずの潮流速が通常より速くなり、その結果30年前の調査結果との間に大きな変化が出なかった可能性が高いのである。ところが公調委はこの調査の「潮流に大きな変化なし」の結論だけは無批判に採用し、他方平均して12%も減少したとする西海区水産研究所の流速調査結果は両調査時の季節が違うという理由(密度流の違いに比較すればわずかな誤差と考えられる)で採用しないという首尾一貫しない判断を行っている。底質の細粒化やベントス種の変化という傍証もあり、しかもほとんどすべての漁業者が口を揃えて証言している潮流鈍化という事実を、なぜ公調委は信用しないのか、私たちは強い憤りを感じるものである。

4.データもシミュレーションも成層度強化の事実を示す
 次に、今回の裁定における最大の争点となった成層度の強化問題について、これをなりふり構わず否定しにかかる公調委の姿勢の異常ぶりを指摘しなければならない。
 確かに赤潮の発生増殖機構としては、理論的には富栄養化や海水温上昇など数々の要因・メカニズムが考えられるし、その具体的なメカニズムの詳細については不明な点が多く、そうした意味では科学的知見が発展途上にあることは事実であろう。しかし現在発生している有明海の赤潮については、数ある要因候補のうちどれに当てはまるかについては、現状の調査だけで十分判断できるのである。実際、熊本県立大学の堤教授の研究室が2001年から継続的に実施している調査からは、有明海奥部での赤潮には必ず成層が伴っているという事実が明確になっている。公調委がその気にさえなれば、いつでも自ら調査してその事実を追検証できることである。ところが今次裁定書では奇妙なことに、現に成層が生じているという事実にはなぜか全く言及されておらず、したがって認定もされることなく終わっている。審問の場で参考人として証言した堤教授の調査結果についての評価が、裁定書で全くなされないのは何故なのか。記述を忘れたで済むような軽い論点ではないから、意図的に無視したのではないかと考えざるを得ない。
 現に成層が頻発しているという明々白々な事実が認定されてはじめて、その次に問われるのが、締め切り前と比較して成層度が強化されたか否かという問題になるのではないか。ところが公調委は、諫干締め切り以前の実測データが不足しており、観測結果で確認できないことを理由にして諫干によって成層度が強化された点を認定しなかったのである。この一点を認定したら最後、簡単に諫干から漁業被害までの因果が結びついてしまうのだから、公調委にとっては最後の砦ともいうべき絶対に譲れない一線だったのだろう。
 しかし専門委員が独自に行ったシミュレーション結果では、諫干の堤防の有無の違いによって河川水の有明海における輸送経路に変化が生じ、その結果諫干後は成層が強化されたという重大な事実が判明した。しかも私たちも浅海定線データの解析から、一部調査ポイントでは河川水の輸送経路が変化し、鉛直混合が弱まっている事実を明らかにして、そのシミュレーションの正しさを結果的に裏付けてきた。そのうえ堤教授のデータ解析によっても、単位降水量当たりの赤潮指数が98年以降急激に大きくなったことが完璧に証明されているから、結局のところ「締め切りを境にして有明海奥部の成層度が強化され、その結果赤潮が増加した」事実の証明は二重三重になされてきたのが実態だったのである。成層度の強化が認定されれば、論理必然的に諫干によって貧酸素水塊が頻発していることになり、ノリ以外の魚貝類被害の因果関係論にとっては二つ目の要因(一つ目はプランクトン堆積による底質の泥化)と認定されることになるから、これは全体の帰趨を決する重要な論点なのである。
 ところが驚くべきことに公調委は、この堤論文についても裁定書では何らの言及も行っていない。しかも前述のように、いろいろと問題の多い浅海定線観測データからさえも、私たちは成層度強化の事実を摘出提示しているにもかかわらず、公調委はなお成層の強化を証明する「データが不足」していると言い張り、挙げ句の果てには自ら選任した専門委員の行ったシミュレーション結果まで否定するという、無理に無理を重ねて「成層度の強化論の証拠はなお弱い」とする最終判定を行ったのである。こうした判定方法が前述の疫学的判定基準の(2)とほど遠いことは言うまでもないだろう。(2)では、諫干によってメカニズム的に成層度が強化される可能性があることを示し、かつ成層度の強化が赤潮の増加要因になることが示せれば足りるはずのものであり、厳密かつ詳細な自然科学的証明は不要だったからである(杉並病では数種の有害化学物質のうち実際にどれが健康被害をもたらしたかの特定はしていない)。しかも、締め切り後に成層度は強化されていないという証明は、農水省も公調委も行っていないのであるから、それだけでも(2)の争点は決着済みと言わねばならない。
 もし公調委が「自信」をもって判断する上で、本当にデータによる証明が不足していると考えるのであれば、それは着工前に有明海の調査を十分に行ってこなかった事業者側の責任ではないのか。しかも中長期開門調査を行って、現在よりも成層度が弱くなれば諫干が原因だったと誰の目にも明らかになるが、因果関係の有無の判断を任務とする公調委として本当にとことん原因解明を行う意志があるのであれば、なぜ農水省に中長期開門調査を行うように要求しなかったのか。
 つまり公調委には、この有明海問題では因果関係を解明してしまっては困るという何らかの事情があって、自らの任務を放棄しているのではないのかとの疑惑は晴れないのである。公調委に対する社会の信頼は、本件を境に地に落ちるだろう。

5.因果関係各論への的外れな否定論の不可解
 私たちは、諫干を起因として漁業被害に到達する因果の流れについて、申請した3漁業種(ノリ・タイラギ・クチゾコ)に共通する要因(成層度問題から生ずる赤潮・貧酸素・底質悪化という一連の漁場破壊)だけではなく、魚種ごとに、そして場合によっては海域ごとに詳細に立証してきた。しかしそれに対する公調委の判定内容は、数々の思い込みに基づく判断、論理の飛躍、データ処理や利用の恣意性があり、それらは枚挙に暇がないほどである。
 たとえば、海水透明度上昇問題である。浅海定線調査データによると諫早湾口部や熊本県沖海域は明らかに締め切り後に透明度が上昇しており、これはシミュレーションによる潮流鈍化海域と重なるが、この事実を裁定書は無視して、私たちの主張があたかも成層度の強化論だけという思い込みのもとに赤潮増加との関係を判断しようとさえしない。また栄養塩の枯渇した諫早湾内水が成層の強度や風向きによっては三池港方面に移流する可能性(それは謎の浮遊物の航跡からもブイによる表層流調査結果からも裏付けられている)についての私たちの指摘についても、その主張をあたかも「平均流」に乗った移流と曲解した上で否定しにかかる。しかもその際の否定の根拠の一つとして、諫干工事前でも湾口部のほうが大牟田沖よりDIN濃度は低かったということがデータによる証明もなしに挙げられているが、実際には浅海定線調査データは公調委の断定とは反対の結果を示しているのである。
 またタイラギの立ち枯れ原因について、私たちは最新のさまざまな調査結果を総合して、諫早湾口部に集まる浮遊幼生が貧酸素にさらされるので活力が落ちることが根本原因と指摘したが、公調委はそれに対する具体的な反証は全く行うこともなしに、ノリ第三者委報告書や研究者のかつての論文に、「現在立ち枯れ原因を解明中で今後の課題」と書かれているということのみを理由にして、私たちの仮説を否定するという無茶苦茶な論法である。
 そしてクチゾコについても、その漁獲量が下降線をたどり始めた年を85年前後とグラフを読み違えたうえで(実際は海底掘削調査が始まったと見られる88年から下降)、潮受堤防工事が本格化した94年以降のグラフは横ばいだから工事の進行と対応しないと否定しにかかる。しかし農水省の言う潮受堤防工事の本格化という意味は盛土工事が始まったことを示すにすぎず、その頃からは湾内の海況も安定し始めていたのであって、横ばいになるのも当然である。クチゾコの生息に影響を与えた地盤改良工事など濁りの発生する工程は、まさに盛土工事が本格化する前の88〜93年頃を中心に行われていたわけであり、裁定は事実を意図的に無視していると言わざるを得ない。

6.最後に
 公調委は本来、公害問題の紛争解決を目的にしていたはずである。しかし上述のような恣意的な裁定内容では、漁業者のみならず国民の誰も納得できるものではなく、これでは紛争の解決どころかその長期化・混迷化にしか結果しないことは明らかである。審問の場において国側に積極否認(諫干以外の原因で異変を説明すること)を求めたのは加藤委員長本人だったはずであり、国がそれに失敗した以上は潔く因果関係を認定するか、それでも認定しないと言うなら、農水省に代わって公調委が原因を最後まで解明したうえで、私たちに納得のいく裁定書を書き上げる任務を負っていたはずである。結果的には因果関係は不明という内容の裁定しか下せず、その本来の責務を放棄した公調委に、もはや存在意義を見いだすことは難しい。今次裁定は誤りだったと、早晩、科学と正義の名によって公調委は厳しく断罪されることになるだろう。
 ここに私たちは今次不当裁定に満腔からの抗議の意を表明すると共に、今後とも有明海再生のための闘いに全力をあげることを誓うものである。


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