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「中・長期開門調査見送り方針の撤回を」
有明海訴訟弁護団が声明


 農水省は4月22日に福岡市内で有明海沿岸3県漁連との会合を開催し、諫早湾の中・長期開門調査に関して市川副大臣が「調査実施は困難である」との説明を行いました。また、マスコミ各社はこの説明会の報道と共に、、農水省が調査見送りの方針を固め、近く正式に決定される見通しであることを伝えています。

 このような農水省の動きに対して、よみがえれ!有明海訴訟弁護団は、方針を撤回し開門調査の実施を強く求める、以下の声明を23日に発表しました。


声 明

中長期開門調査に関する農水省の対応について

2004年4月23日
よみがえれ!有明海訴訟弁護団

 昨日の報道によると,農水省は,諫早湾干拓事業と有明海のノリ不作等の被害との関連が想定されることから,これを検証するため,中・長期にわたる同干拓事業の潮受堤防の開門調査を実施すべきとの有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会(以下,「ノリ第3者委員会」という)の提言を無視し,同開門調査の実施を見送るとの方針を固め,月内にも農水大臣が最終決定をする方針であるという。

 このような農水省の対応は言語道断であり,そのような方針があるとしたら,直ちにこれを撤回し,逆に,中・長期開門調査を無条件に実施すべきである。

 第1に,諫早湾干拓事業着工以来,諫早湾内においては早くからタイラギをはじめとした深刻な漁業被害が発生し,ギロチンと称された潮受堤防締め切り後は,2000年の大規模なノリ不作など,被害は有明海全域に拡大し,いまや有明海漁業とこれを基盤とした地域経済は極めて深刻な状況にある。中・長期開門調査は,漁民にとって生き残りをかけた最後の望みであり,一省庁の面子のために多くの漁民の希望と生活を奪い去ることは犯罪的ともいえる暴挙である。

 第2に,そもそも中・長期開門調査は,2000年の歴史的なノリ大不作を契機とした世論の高揚のなかで,ノリ不作をはじめ有明海漁業の壊滅的な被害の原因を究明し,その対策を提言する目的で,農水省みずからが設置せざるをえなくなったノリ第3者委員会の結論である。ノリ第3者委員会は,有明海の深刻な漁業被害をもたらせた有明海異変の原因は諫早湾干拓事業であると想定し,その検証のためにこうした開門調査を提言した。本来なら,設置の目的と経緯に照らし,農水省は直ちにこれを実施しなければならない性質のものである。これを実施すれば,干拓事業と漁業被害の因果関係はより明確にならざるをえないことは,多くの心ある研究者が支持している。この期におよんでの隠蔽工作ともいうべき今回の方針は,行政の暴走以外のなにものでもない。

 第3に,諫早湾干拓事業と有明海における深刻な漁業被害の関係については,佐賀地方裁判所において近々仮処分決定が出されることとなっており,また,公害等調整委員会に係属している原因裁定手続きにおいても,本日から研究者の尋問が始まり,本格的な審理が開始され,遅くない時期に判断が下されることとなっている。この時期に農水省が関連性なしとして独善的に中・長期開門調査を実施しないとの決定を下すことは,こうした司法の判断をも無視するとの姿勢をあらわにしたものであり,極めて不遜な態度であると言わざるをえない。

 第4に,中・長期開門調査は,熊本・福岡・佐賀の各県議会が全会一致による決議でその実施を求めたのをはじめ,沿岸各市町村自治体でも次々に同趣旨の決議があがり,有明海を漁場とする各県漁連もその実施を求めて再三にわたって要請を行ってきたところである。今回の農水省の方針は,地方と現場を無視した,極めて権力的・非民主的な中央官僚の独善的暴走との誹りを免れない。

 以上のとおり,農水省は,今回の方針を撤回し,直ちに中・長期開門調査を実施すべきである。

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