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有明海再生基本方針案について意見書を提出
6団体で同案の見直しを求める共同声明も発表

 諫早干潟緊急救済本部と諫早干潟緊急救済東京事務所は1月24日、政府が一般から意見募集(パブリックコメント)を行っていた、「有明海及び八代海の再生に関する基本方針の概要(案)」について、以下の意見書を提出しました。
 また、有明海漁民・市民ネットワーク、日本湿地ネットワーク、WWFジャパン、日本野鳥の会とともに、同基本方針案に対する共同声明を発表しました。

 この基本方針案は、有明海再生における干潟の重要性を認めながらも、環境悪化の主因である諫早湾干拓事業や諫早干潟の再生について何ら方策が示されておらず、海底への砂まき、新たな人口干潟の造成など、新たな環境改変の恐れさえある対症療法的な環境回復策や、港湾、航路整備など旧来型の公共事業によるバラマキ的な漁業振興策が中心となっています。
今回、共同声明を発表した6団体は、問題の多いこの基本方針案に対して、全面的な見直しを求めています。有明海・市民ネットワーク、日本湿地ネットワーク、WWFジャパン、日本野鳥の会も、政府に対してそれそぞ個別の意見書を提出しました。



「有明海及び八代海の再生に関する基本方針の概要(案)」についての意見

2003年1月24日

諫早干潟緊急救済本部
代表:山下八千代
諫早干潟緊急救済東京事務所
代表:陣内 隆之


 私たちは有明海の根本的な環境回復のためには、環境悪化の主因である諫早湾干拓事業の工事を即時中止し、事業を抜本的に見直すことが必要であるという理由で、その方策を欠いている、昨年与党から提出された有明海八代海特措法案に対しては、一貫して反対の立場をとってきた。
 第155回臨時国会で与党案は可決・成立し、有明海八代海特措法は施行され、本年1月16日付にて、関係各省より「基本方針の概要(案)」が提示されたが、これには私たちが従来より問題点として指摘してきた「旧来型土木工事や漁業振興策バラマキ」の実施が、極めて露骨に現れている。これでは、有明海再生どころか新たな環境破壊さえ招きかねないものであり、本末転倒と言わざるを得ない。
 この際、根本的な見直しが必要である。

 特に、有明海再生にあたって干潟の重要性を認めているにも関わらず、その保全について、「現状よりできるだけ減少することがないよう」などと、諫早湾干拓事業で干潟が大規模に消失した現状を追認していることは、到底納得できるものではない。諫早干潟の再生なしに有明海の再生は絶対にあり得ず、干潟消失の反省こそが必要である。
 現在、干拓事業によって、諫早干潟は一時的、暫定的に陸化しているが、事業の水位管理を停止すれば、諫早干潟の復元は今からでも可能である。諫早干潟の原状回復を基本方針に盛り込むべきであると断固意見する。
 また、未だ技術が確立していない人工干潟の造成を基本としていることも大きな問題である。現存する全ての干潟を保護水面として原則開発禁止にするとともに、諫早干潟をはじめとした消失干潟の復元は、潮汐の回復等による原状回復を基本とすべきである。

 さらに、調査研究においては、諫早湾干拓事業や筑後大堰、熊本新港など大規模公共事業の環境への影響を具体的に検証すべきであり、特に諫早湾の中長期開門調査を真っ先に早急に行うべきである。

 長崎県知事選に絡んで政官業癒着の実態が次々と明らかとなってきているが、覆土・浚渫・耕耘、放流・漁礁設置・トビエイ駆除など小手先の対症療法や、下水道・海岸保全など各種施設の整備、港湾や漁港のさらなる整備や航路掘削、道路建設など旧来型土木工事、さらには海砂採取などを基本方針とすることの本当の目的は、こうした利権構造の温存であり、それは明らかとなりつつある採砂業者・覆土業者であるマリコンと政官との癒着ぶりからも伺える。
 諫早湾干拓事業の次はこうした「再生事業」による特需によって有明海を食い潰そうというこの基本方針(案)は全面改定すべきであり、ここに厳しく意見するものである。

以上


<共同声明>

「有明海及び八代海の再生に関する基本方針の概要(案)」について

諫早干潟緊急救済本部・東京事務所
有明海漁民・市民ネットワーク
日本湿地ネットワーク
(財)世界自然保護基金ジャパン
(財)日本自然保護協会
(財)日本野鳥の会

 本年1月16日付で、総務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省より提示された標記の「基本方針の概要(案)」については、根本的な見直しが必要である。
個々の見直すべき点については、上記各団体がそれぞれの視点で意見を述べているので、ここでは「基本方針の概要(案)」全般に共通する問題点について、各団体が共同で意見を述べる。

 先の国会で成立した「有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律」は、「有明海及び八代海を豊かな海として再生すること」を目的としている。しかしながら、今回示された「基本方針の概要(案)」は、同法に基づいたものとはいえ、実質的には、港湾設備や漁港関連施設の整備の推進ばかりに重点が置かれ、それらの公共事業などが、極めて具体的に位置づけられている一方で、調査研究および環境保全対策は、抽象的で、実効性が期待できない。

 むしろ、このような公共事業などによる人為的な環境の改変が、有明海および八代海の環境に悪影響を与えてきたことへの反省に立ち、既に進行中の事業を含め、海岸・港湾関係の工事や海砂の採取、集水域の河川工事を厳しく規制することこそが必要である。

とりわけ、諫早湾干拓事業については、前面堤防工事を即時中止し、潮受堤防の撤去を含む事業の根本的な見直しに着手すべきである。

 また、環境保全・漁業振興を目的としたものであっても、覆土、しゅんせつ、干潟・藻場の造成、種苗放流などは、慎重な影響調査に基づいたものでない限り、効果が不確かであり、逆に環境に悪影響を与える危険性をはらんでいる。拙速な対策の実施は、厳に慎むべきである。
 「基本方針」の策定に当たっては、有明海・八代海の海域の特性とこれまでの人為的な環境改変の影響についての調査研究を最優先すべきである。特に、「農林水産省有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会」が提起した「中・長期開門調査」を早急に実施することを強く求める。

以上


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