市民による諫早干拓「時のアセス」報告書要旨

2. 営農 営農計画の諸問題
(農政ジャーナリスト 青木 智弘氏)

●新干拓地での営農計画にはかなり無理があり、実現は困難である。

ジャガイモを主産物としているが、干拓地には適さない。
県内実績の2倍の収穫をを見込むなど、反収見積もりが過大である。
仮に、計画通りの収穫が実現されると、現在長崎県内からの出荷量を倍増させることになり市場価格の低下を招くが、営農計画では全く配慮されていない。

●入植費用が高額であり、入植者の見込みがたたない。

5ha規模の増反入植でも3,700万円の費用がかかり、現在の農業情勢では投資負担が過大。
収穫が安定するまで5年程度かかると見られるが、それまでの支援策も未定。
調整池の水は農業用水に不適で追加の設備投資が必要になる可能性もある。

●「食料・農業・農村基本法」に抵触する懸念もある。

新干拓地における農業生産量が、有明海での漁獲の減少を上回るか疑問。本当に食料増産になっているのかが、検証されてしかるべきである。
「食料・農業・農村基本法」には、第六条(水産業及び林業への配慮)において「食料、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たっては、水産業及び林業との密接な関連性を有することにかんがみ、その振興に必要な配慮がなされるものとする。」とあるが、諫早湾干拓事業は、現時点で水産業振興の大きなさまたげとなってなっている。

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