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佐賀地裁判決に関する諫早干潟緊急救済本部の声明

 諫早干潟緊急救済本部と諫早干潟緊急救済東京事務所では、2008年6月27日の佐賀地裁による諫早湾開門命令判決に関して、国は判決に従い直ちに水門開放を行うべきとする、以下の声明を7月1日に発表しました。

声明:直ちに諫早湾水門開放の政治決断を!

2008年7月1日
諫早干潟緊急救済本部 代表 山下八千代
同 東京事務所 代表 陣内 隆之

 6月27日、佐賀地裁は、諫早湾の長期開門調査を求める画期的な判決を下した。この判決を受けて、農水省では、早くも控訴の動きを示しているが、これ以上の先延ばしは、漁業者のみならず農業者そして地域住民全体の不利益となり、決して許されるものではない。若林正俊農水大臣そして地元選出の今村雅弘・岩永浩美両副大臣は、判決を厳粛に受け止め、開門の政治決断を行うよう切に要望する。

 今回の本訴判決は、中長期開門調査を求めた工事差し止め仮処分に対する福岡高裁の取り消し決定をも踏まえた内容であり、控訴審で簡単に覆るような判決ではない。いたずらに開門調査の先延ばしを図ることは、現在全く収入の目処が立たない有明海、特に諫早湾周辺の漁船漁業者にとっては死刑宣告に等しく、国が開門調査を行わないという「立証妨害」を続けることは、信義に反する不誠実な対応である。
 そして、営農者にとっても、開門調査の実施が遅れるほど、被る不利益も大きくなるのではないだろうか。そもそも、訴訟継続中にも関わらず、強引に入植を奨めた国の責任は計り知れないと言わざるを得ない。

 農水官僚は、農業用水や防災、漁場への影響などを挙げて不安を煽る虚構に満ちたキャンペーンを始めているが、それらは全て、国会院内でのヒアリングなどで、合理的根拠がないことが明らかとなっている。
 例えば、開門による漁場への影響は、農水省による極端な条件でのシミュレーションを基にした脅しであるが、そもそも現在でも排水と共にヘドロを出しており、閉門したままでは、それが永久に続くのだ。しかし、段階的に開門を進めていく方法を取れば、今よりも多く出ることはなく、調整池水質が改善することで、ヘドロの供給自体もやがて減少する。
 防災についても、判決では開門の実施まで3年の猶予期間を設けているが、現在の-1mの水位管理から段階的に行えば、今すぐにでも開門は可能である。そして常時開門への猶予期間のうちにポンプ増設やクリーク拡張・樋門整備など本来行うべき防災対策を進めれば、既存背後地の住民にとっても大きな利益となる。
 農業用水についても、もちろん開門すれば調整池に塩水が入り農業用水として使用できなくなるが、代替水源は、下水処理水の再利用、ため池の設置、河川余剰水の利用など複数ある。営農開始以降、環境基準を越えた調整池の水質は更に悪化し、この夏にはまたアオコの大発生が危惧されている。食の安全が叫ばれる昨今、有害なアオコ毒素を含んだ水を農業用水に使用するよりも、代替水源のきれいな水を使用する方がはるかに安全であり、営農者にとっての利益になるはずである。

 このように、開門による不都合は技術的対処で十分回避できるばかりか、水門開放によって、現在行っている無駄な調整池水質改善事業費や彌縫策でしかない有明海再生事業費の節約にも繋がる。そして、平常時の長期開門によって、失われた干潟環境も回復し、再び多様性に富んだ生態系が取り戻されるに違いない。
 環境問題がテーマとなるG8サミットの開催に際しても、開門拒絶の姿勢は環境重視の方針とは大きく矛盾し、国際的な非難を受けるであろう。福田首相は、地域の意見を聞きながら事業を行った経緯もあると述べているが、水門開放を求める有明海沿岸の多くの住民の声に耳を傾けるべきである。佐賀、熊本、福岡三県をはじめとする地元自治体や議会、漁連など開門調査を求める要請の重みを噛みしめてもらいたい。農水官僚は頑なに水門開放を拒絶するかもしれないが、求められているのは政治による誠意ある決断である。若林正俊農水大臣そして今村雅弘・岩永浩美両副大臣においては、農水官僚の説明を鵜呑みにするのではなく、有明海住民の願いや司法からの意見・命令を真摯に受け止め、直ちに水門開放の政治決断を行っていただきたい。

以上