INFORMATION
REPORT
LIBRARY
PHOTO
VIDEO(準備中)
LINK
SHOP(準備中)
メールマガジン
諫早問題関連サイト
検証「諫早湾干拓事業」
有明海漁民・市民ネットワーク(ブログ)



諫早湾干拓完工式に対する抗議声明
  ――よみがえれ!有明訴訟弁護団


 2007年11月20日に行われた諫早湾干拓事業の「完工式」に対し、よみがえれ!有明訴訟弁護団は同日、以下の抗議声明を発表しました。



−声 明−

諫早湾干拓工事完工式にあたって

2007年11月20日
よみがえれ!有明訴訟弁護団

 諫早湾干拓事業は,そもそも事業そのものの合理性がなく,しかも有明海異変と呼ばれる環境破壊とこれに伴う深刻な漁業被害を生み出す「無駄で有害な公共事業」として,多くの問題を指摘されてきた。
 それらの問題について,なんら説得力ある回答もしめされないまま,本日,完工式の名のもとに記念式典が開催されることに対しては,大きな不快感と憤りを禁じ得ない。
 当弁護団は,いま,佐賀地方裁判所における潮受堤防撤去・排水門の開門を求める民事訴訟と,長崎地方裁判所における干拓農地リース事業への長崎県の公金支出差し止めを求める住民訴訟の2つの訴訟を担当している。
 佐賀地裁に提起した民事訴訟においては,2004年8月に工事中断を命じる仮処分決定が出された。この決定は,有明海沿岸自治体から次々に支持があがるなど,世論からこぞって歓迎された。残念ながら,この決定は,その後,福岡高裁において覆されたが,その福岡高裁においてすら,有明海異変と干拓工事は無関係とする国の主張は受け入れられず,逆に,国は「中長期の開門調査を含めた,有明海の漁業環境の変化に対する調査・研究を今後とも実施する責務を,有明海の漁民らに対して一般的に負っている」と指摘されている。敗訴決定にもかかわらず,その後,多くの漁民が新たに訴訟に立ち上がり,現在,佐賀地裁における訴訟は原告数が2500名を超え,紛争はますます激化している。昨年来の研究者や漁民の尋問においては,有明海異変と干拓工事の因果関係をめぐる新たな研究成果と,年を追うごとに深刻化する漁業被害の実態が明らかになった。
 2006年8月に長崎地裁に提起した住民訴訟は,本年9月10日に結審し,きたる12月17日に判決を迎える。この裁判のなかで,長崎県が国と共同して計画したという,干拓農地リース事業に対する長崎県の公金支出の違法性は,余すところなく明らかになった。とりわけ,本年2月に明らかになった公金支出のスキームは,長崎県が貸金として支出した公金は,そもそも返済原資が予定されていないという驚くべきものであった。その点を指摘されて,あわてて組み直してきた新しい公金支出のスキームは,貸付開始から返済完了まで98年を要するという荒唐無稽なものであった。
 こうした違法・不当な公金支出をあえて無理押ししなければ干拓農地において営農を開始できないということは,何を物語るのか。それは,とりもなおさず,農地造成という干拓事業の目的に必要性・合理性がなかったということに他ならない。
また,干拓農地リース事業への違法な公金支出は,長崎県の県財政が危機に瀕し,長崎県民の暮らしや福祉を守るための公金の効果的な支出が求められているときだけに,長崎県民に犠牲を強いるものである。諫早湾干拓事業は,漁民のみならず,いまや,長崎県民をも犠牲にしようとしている。
しかも,長崎県民を犠牲にする干拓事業への公金支出は,干拓農地リース事業にとどまらない。水質保全目標を達し得ない調整池への莫大な公金支出もまた,長崎県民をますます苦しめざるをえない。
 以上のように,諫早湾干拓事業をめぐる諸問題は,工事終了後も全く解決されておらず,むしろ,その矛盾は拡大し,深刻化している。
 12月17日に,長崎地方裁判所において長崎県の公金支出が差し止められ,干拓農地リース事業が頓挫するときには,もはや干拓農地全域での営農は不可能になる。
 いまこそ,改めて干拓事業を全面的に見直し,国と長崎県のこれ以上の税金のむだ遣いに終止符を打たなければならない。有明海を再生して深刻な漁業被害から有明海漁民を救済するため,潮受堤防排水門の開放など,諫早湾干拓事業をタブー視しない措置を緊急に行うべきである。